デザイン思考は意味がない、は嘘!価値を発揮する範囲や正しい考え方

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私が書きました 河上 泰之
はてな、電球

「デザイン思考って本当に意味があるの?」
「デザイン思考について学んでみたけど、意味がないように感じた」

このようなお悩みをお持ちではありませんか?

確かに、「デザイン思考は意味がない」という意見を目にすることがあります。

結論から申し上げると、

「デザイン思考は意味がない」ということはありません。

なぜなら、

・現代社会は不確実性の高い時代で、経験則が通じないから日本には機能・性能面で水準が高い製品が溢れているので、潜在的なニーズ・課題を見つけて解決する必要があるから

です。

ただし、デザイン思考に意味はない、と言って逃げ回れる時間と余裕があるなら、そもそも勉強する必要はありません。

本記事では、デザイン思考を本気で学び成果を出したい人に向けて、デザイン思考の本質について、筆者である私、河上の考えをお伝えし、「デザイン思考は意味がないの?」というあなたの疑問を払拭していきます。

本記事でわかること
・「デザイン思考は意味がない」は間違っている
・意味がないデザイン思考の例
・デザイン思考で重要なのは相手を理解しようとする「人間への愛」
・デザイン思考は「ヒトの問題」に限定して使おう

本記事を読めば、デザイン思考は意味があるものだと納得でき、更にデザイン思考を学ぶ意味を見出せることでしょう。

1.「デザイン思考は意味がない」は、間違っている

「デザイン思考は意味がない」「デザイン思考の輝きは失われつつある」など、デザイン思考に対する否定的な意見を目にすることがありますが、冒頭でもお伝えした通り、「デザイン思考は意味がない」というのは間違いです。

では、「デザイン思考は意味がある必要なもの」と言える理由は何でしょうか?

理由として、主に以下の2つのことがあげられます。

・現代社会は不確実性の高い時代で、経験則が通じないから日本には機能・性能面で水準が高い製品が溢れているので、潜在的なニーズ・課題を見つけて解決する必要があるから

上記の理由について詳しく把握することで、あなたの中にある「デザイン思考は意味がないかも?」という気持ちを払拭していきましょう。

1-1.現代社会は不確実性が高い時代で、経験則が通じないから

現代社会は、不確実性が高い時代と言われています。

<不確実性が高い時代とは>
不確実な要素が多く、予測できないことが起きうる時代のこと。
社会情勢・技術革新・価値観など、様々な不確定な要素が複雑に絡み合い、単純に解決策を導き出すことが難しい、そんな現代社会を表す言葉。

不確実性が高い時代においては、経験の中に答えがない場合が多く、これまで経験したことがないところの答えを探す必要があります。その答えを探すのに役立つのが、デザイン思考です。

デザイン思考は、これまでの経験をもとにアイディアを出すのではなく、創造的なアイディアを生み出して顧客にとって本当に価値があるものを探し出す思考法だからです。

例えばここ数年、地球温暖化による気候変動によって、私たちはこれまでに体験したことがない猛暑を経験しています。これから先どこまで暑くなるのか、また私たちの生活が猛暑によってどのように変化していくのか、明確な答えはありません。

そんな中で、私たちが必要とするものは、従来の方法である「課題の仮説をその経験則をもとに解決策を導き出すやり方」では見つけることができません。これまでの経験の中に、答えはないからです。

一方、デザイン思考では、「どのユーザーが」「どのような問題を抱えていて」「どうすればその問題を解決できるのか」ということについて、創造的なアイディアを生み出して考え、ユーザーにとって本当に価値があるものを探すので、予測できない環境下でも解決策を導き出すことができます。

今、地球温暖化を例に出しましたが、他にも私たちは以下のような不確実な出来事、環境にさらされています。

・少子高齢化による人口減少問題
・物価の高騰
・コロナウィルスやインフルエンザなど様々な感染症
など

また、以下のようなことについて、近年私たちの価値観は大きく変化しているのではないでしょうか。

働き方に対する価値観
・結婚のあり方に対する価値観
・夫婦の役割分担に対する価値観
など

現代に不確実さを感じている人、予測できないこれから先の未来に不安を感じている人は多いと思います。だからこそ、これまでの経験の中にないような問題の解決策を提示してくれるデザイン思考が必要であり、私たちにとって意味があるものだと言い切ることができます。

1-2.日本には機能・性能面で水準が高い製品が溢れているので、潜在的なニーズ・課題を見つけて解決する必要があるから

デザイン思考が必要だと言い切れるもう1つの理由として、現在市場にある、あらゆる製品の水準が高いことがあげられます。どの商品も高水準なため、他社との差別化が難しくなりました。

そこで、新たに出す製品においては、ユーザーが自分でも気づいていないような潜在的なニーズ、課題を見つけ出し、それらを解決することで差別化することが求められるようになり、課題を見つけて解決法を模索するデザイン思考が注目されるようになりました。

エアコンを例にあげて考えてみましょう。

過去は、「暑いからクーラーが欲しい」のように、表面的な問題を解決すればユーザーは満足していました。しかしそのうち、暑い人と寒い人がいるので、より快適な空間を作るために、センサーで風を当て分けるように進んでいきました。この時点で、暑い、寒いという、エアコン本来の役割は、ほとんど果たし尽くしたと言えるでしょう。しかし、そんな中でも、差別化できる新しいものを生み出す必要があり、現在は各社「快適な空間」を売るようになっています。マイナスイオンを発生させたり、ウィルスを除菌したり、加湿器と連動して湿度を保てたりと、温度調節とは別の問題を解決してユーザーのニーズを満たすべく、商品が開発されています。

デザイン思考は、ユーザーを定め、本来の機能を超えたニーズ、潜在的なニーズを把握し、そのユーザーが抱えている問題の解決策を探すために非常に便利な道具です。

機能・性能にメーカー間で大差がないほど高水準の製品が並ぶ中で、一体何で差をつけるのか?基本的な機能や性能以外のところに問題を見つけて解決することが求められる現代社会において、「ヒトの問題」を見つけて課題を解決するデザイン思考が必要不可欠であると言えるでしょう。

2.意味がないデザイン思考のケース

1章では、「デザイン思考は意味がない」は間違っていると言える理由についてお伝えしてきましたが、実は「デザイン思考は意味がない・使えない」といえる場合もあります。

それは間違った使い方をした場合です。

この章では、使い方が間違っている、または適していないがゆえにデザイン思考の力を発揮できない以下の2つのケースについてお伝えしていきます。

・「ヒトの問題」以外を解決しようとする場合・ゼロベースからの商品やサービスの開発をしようとする場合

意味がないデザイン思考のケースを把握することで、「デザイン思考を使ってみたけどやっぱり意味がない」と感じる機会を減らすことができるでしょう。

2-1.「ヒトの問題」以外を解決しようとする場合

デザイン思考は、「ヒトの問題」を解決するための道具なので、人が登場しない問題は解決することができません。

なぜならデザイン思考の基本的なプロセスは、インタビューを通じて問題を探し、導き出した解決策をユーザーにテストしてもらって再考を繰り返すことだからです。

例えばフランチャイズ運営のように、ある程度決まったことを繰り返す仕事や、建物の構造計算や保険の計算のような仕事には、デザイン思考は意味がありません。

また、「CPUの高性能化」のような問題は、「以前のモデルより速くする」のように答えが決まっていて、人間の気持ちを考える必要がないため、デザイン思考は意味がありません。

このように、デザイン思考は「ヒトの問題」を解決するための道具であり、人の気持ちが関係ないトピックには使えないので、使い方を間違えないようにしましょう。

2-2.ゼロベースから商品やサービスを開発しようとする場合

デザイン思考は、ゼロベースからの商品やサービスの開発には向いていない場合があります。

デザイン思考では、インタビューなどを通じてユーザーの声に耳を傾けることが非常に重要ですが、この世に存在しないものについては、ユーザーの声を集めにくいからです。

例えば、「スマホに変わるような全く新しいツールを作ろうと思うんだけど、どう思う?」とユーザーに投げかけても、問題を定義するまでに至るのは非常に長い道のりだと言えるでしょう。

一方、iPhoneの問題点について声を集めて問題を定義することは、それほど難しいことではなく、ユーザーに共感して、課題を探り、問題を解決することができそうです。

このように、ユーザーの声が必要不可欠なデザイン思考は、ユーザーの思考を集めにくいゼロベースから商品やサービスを開発する際には不向きだと言えるでしょう。

<コラム:デザイン思考の価値がわからない人は学ぶ必要はない?!>

不確実性が高い現代社会においても、「デザイン思考に意味はない」といって逃げ回れる時間と余裕があるのなら、デザイン思考を勉強する必要はありません。

知識創出という意味では、デザイン思考と大学の研究活動は類似点が多いのですが、大学に存在意味がないと言い切れる人も、デザイン思考を一生学ばなくていいです。

ヒトの問題を解かなくても、食べていける仕事はたくさんあります。しかし、コンピュータでコードを書くことも、ChatGPTができてしまったように、さまざまなことが自動化されることが見えています。

一方で、何を作ればいいのかは、まだ人間が探す範囲となっています。「何を作るのか」というのは、利用者にとっての「理想と現状の差を縮める」=「問題を解く」ために、問題を特定して方法論を考えることにほかなりません。デザイン思考はそのために使える道具です。

デザイン思考の5ステップ「共感、問題定義、アイディア出し、試作、テスト」この普遍的な進め方は、米国人気質的に賢く構造化されて作られています。我々人間の「考える」という自然を、構造化することで言語化して他者に伝えようとするところが、デザイン思考のいいところです。

それでもなおデザイン思考が必要ないと言えるのなら、デザイン思考を使わなくていいです。

3.デザイン思考の本質は「人間への愛」

デザイン思考の本質。それは相手を理解しようとする「人間への愛」です。

「本気で思いやる心・相手を知ろうとする心=愛」なくして、ユーザーの心を深く理解することはできません。

例えば、「家族が何か悩みを抱えている」と知った時と、「ただのクラスメートが悩みを抱えている」と知った時では、その悩みが何かについてどのくらい深く知りたいか、違いがありませんか?多くの人は、家族が抱えている悩みについて、より詳しく深く知りたいと思うはずです。

​それはなぜかというと、そこには「愛」があるからです。

デザイン思考でユーザーの問題を定義するとき、ただのクラスメートよりも更に遠い存在であるユーザーの現状と理想を理解して、その差から問題を定義しますが、「問題を抱えている本人にとっての現状と理想」を、他人が理解しようとすることは非常に難しいことです。

しかし、そのような前提の中でも、デザイン思考では他人を理解しようとすることが一番重要で、いかに深く理解できるかが重要なポイントとなります。

現状と理想の差を理解することについて、もう少し具体的に考えてみましょう。

例えば、赤ちゃんの夜泣きがひどくて泣き止まないという問題を抱えているユーザーが、赤ちゃんの夜泣きがおさまってほしいと願っているとしましょう。この状況の本当の苦しさを他人が理解するのはとても難しいことで、本当の意味で理解するためには、自分の家族の悩みを理解しようとするかのように、「親身になって理解したい」とか「現状を理解して悩みを解決してあげたい!」と強く思う「愛」がなければ、そう簡単には理解できません。

もし愛を持って理解することができれば、表面的には単に「夜泣きのせいで寝不足が辛い母親」と見えていたのが、「この寝不足が永遠に続くような気がしておかしくなりそう」「こんなに夜泣きが治らないなんて赤ちゃんに問題があるのではないかと不安で仕方ない」「寝不足で母乳の出に影響が出て困っている」「ぐっすり眠って翌日元気に働きたい」などというように、さらに掘り下げて理解することができます。

逆に人間への愛がないと、「夜泣きがひどくて悩んでいる母=寝不足」というように、偏見でラベリングしてしまい、正しく問題を定義することができない可能性があります。

デザイン思考では、ユーザーの声に耳を傾けてその声を商品やサービスに反映させることが重要です。そこに「人間の愛」があるかないかで、導き出される答えが大きく変わることは、先ほどの夜泣きの例でお分かりいただけたかと思います。

デザイン思考を実践する際は、ぜひ「人間への愛」を持って、臨んでください。そうすれば、デザイン思考を使いこなせるようになる大きな1歩となるはずです。

4.デザイン思考は「ヒトの問題」に限定して使おう

「デザイン思考は意味がない」は間違っている。

ここまでこの記事を読んで、この1文が腹落ちしたのではないでしょうか?

最後に、今後あなたが再び「デザイン思考は意味がない」と感じることがないように、絶対に間違えないでほしいポイントをお伝えします。

それは、デザイン思考が対象とするのは「ヒトの問題」ということです。

論理のみで戦えるような問題、例えば強度計算のような重さと素材の耐える力を算数で整理すれば終わるような問題や、数字しか出てこなくて人間は関係ない問題には使えません。

一方で、デザイン思考は人間が絡む問題で、かつ自分達が働きかけられるのなら使えるので、社外の人間を相手にするのなら新規事業開発でも使えます。また、社内なら業務改革などでも使うことができます。

しかし、派遣会社から来ている派遣労働者に関して、働き方を変えるために、派遣を受け入れている会社ができることはあまりないように、自分達で働きかけられない人間の問題を解決することはできません。

このように、デザイン思考は、人の問題を解決するための道具に過ぎず、使える範囲に対して正しく使うことが前提となることを忘れないでください。

あなたが、

「デザイン思考を使いこなせるようになりたい。」
「デザイン思考は必要だということがわかったから、実践できるデザイン思考を学びたい」

と思ったのなら、ぜひこちらも併せてご覧ください。

出典:「Schoo

5.まとめ

本記事では、「デザイン思考は意味がない」という考えが間違いであるということを中心に、デザイン思考の必要性について詳しくお伝えしてきました。

「デザイン思考」というワードが先行して、その実態を把握しきれていない人は意外と多くいます。また、デザイン思考を学んだにも関わらず、実践の練習をしていないがために使いこなせていない人も多いように感じます。

デザイン思考は、座学ではなく、実践の中での学びが多く、講座を選ぶ際は「座学+実践」が提供されているかがポイントです。

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