DXの推進には3つの課題がある!解決策・注意点を解説

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私が書きました 河上 泰之
DXサイコロと人

「DXの推進には、どんな課題があるんだろう?」

「DXを推進したいが、スムーズに実施できるか不安」

 

あなたは、社命でDXを推進しようとしているのですね。

しかし、これまでに経験がない業務であるため、失敗しないか不安に思っているのではないでしょうか。

 

結論からいえば、DXには大きく分けて3つの課題があります。

 

「DX」における課題3つ

・DX推進に関わる人材が不足している

・DXの「目的の共有」が不足している

・DXなのに「アナログ業務のデジタル化」に留まっている

 

上記に挙げた3つの課題を解決しないまま、DXを推進すると、思ったような効果が得られない可能性もありますから、注意が必要です。

 

そこで本記事では、これら3つの課題を詳しく解説するとともに「3つの課題を解決する方法」や「参考にしたいDXの成功事例」についても解説いたします。

 

本記事を読めば、スムーズにDXを推進するための道筋を立てることができます。

 

「DXで起こりがちな課題を解決する方法を知っておきたい」

「DXで失敗したくない」

 

といった思いがある方にとって参考になる記事です。

 

それでは早速、見ていきましょう。

 

1. そもそも「DX」とは?

DXの文字に座る人と電球

DXという言葉を耳にする機会が増えましたが「DXがどういうものなのか、イマイチ理解できていない」という方も少なくないのではないでしょうか。

 

そこで、まずは「DXとは何か?」について解説いたします。

 

そもそも「DX」とは?

・「DX」の定義

・「DX」と「デジタル化」の違い

 

1-1.「DX」の定義

 

経済産業省は、「DX(デジタルトランスフォーメーション/Digital Transformation)」を以下のように定義しています。

 

「DX」の定義

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

出典:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver. 1.0

 

わかりやすく言い換えれば、顧客ニーズを調査・分析したうえで、何らかのデジタルテクノロジーによって、

 

・製品・サービス

・ビジネスモデル

・組織・企業文化・風土

・業務プロセス

 

などを変革して「競合優位性」を確立すること(=恒常的に売上を確保できる体制を作る)です。

 

例えば、イタリアンを提供する飲食店の場合。

「ゴーストレストラン」への業態転換が、DXの好例として挙げられます。

 

イタリアンの飲食店における「DX」の例

店舗の売上が芳しくないため閉店して、事業形態をゴーストレストランに一本化。月々の家賃を大幅に削減できたほか、接客スタッフの雇用にかかわるコストもゼロになった。数万円のIT投資で、安定した収益を上げられるようになった

 

1-2.「DX」と「デジタル化」の違い

 

DXを理解するうえで、是非とも押さえておきたいのが「デジタル化」と「DX」の違いです。

 

DXのことを「デジタル技術を用いた業務効率化」だと考える人が多いですが、それは「デジタル化」に過ぎません。

 

一方、DXは、顧客に提供する製品・サービス・ビジネスモデルそのものを「変革(=デジタル化)」して、「売上拡大」や「新規顧客獲得」を目指すものです。

 

オーダーメイドのスーツを提供する会社を事例に、単なる「デジタル化」と「DX」の違いについて、詳しくご説明しましょう。

 

オーダーメイドスーツ会社の場合

【デジタル化(≒業務効率化)】

●稟議回覧システムの導入

稟議の回覧を紙で行っていたが「稟議回覧システム」を導入して、スムーズな稟議回覧を実現した(=業務効率化の実現)

●「オンライン会議システム」の導入

リモートワークの導入にともない「オンライン会議システム(Zoomなど)」を導入する(業務効率化の実現)

「経費精算システム」の導入

経費の精算は、経費が発生するたびに経理部に領収証を渡していたが「経費精算システム」を導入。インターネットにつながっていれば、どこでも経費申請ができるようになった(業務効率化の実現)

【DX(≒売上増による利益拡大)】

●「オーダーメイドアプリ」を開発

スーツをオーダーメイドできるアプリを開発。顧客は、店舗に足を運ばずとも、気軽に注文できるようになり「売上拡大」につながった

●「サブスクリプションサービス」を提供

自分に合ったスーツ・ネクタイ・シャツが毎月届くサブスクリプションサービスを提供。ファッションセンスに自信がない人々の利用が拡大して「売上拡大」につながった

●「オンライン接客」を強化

SNSやチャットボットで「オンライン接客」サービスを強化。店員とのコミュニケーションが億劫に感じやすいZ世代の若者の利用が増えて「売上拡大」につながった

 

上記のように、単なるデジタル化とDXは似て非なるものです。

 

DXは、顧客に提供する製品・サービス・ビジネスモデルそのものを「変革(=デジタル化)」して、「売上拡大」や「新規顧客獲得」を目指すものであると、心得ておきましょう。

 

2. 日本におけるDXの課題3つ

書類に焦る男性とDXができている女性

DXとは何かについて、じゅうぶんに理解が深まったのではないでしょうか。

 

続きまして、本題である「DXの課題」について解説します。

ポイントは3つあります。

 

日本におけるDXの課題3つ

・DX推進に関わる人材が不足している

・DXの「目的の共有」が不足している

・DXなのに「アナログ業務のデジタル化」に留まっている

 

一つずつ、見ていきましょう。

 

2-1.DX推進に関わる人材が不足している 

 

DXにおいては「DXを推進できる人材の不足」が大きな課題になっています。

 

総務省による報告書「デジタルで支える暮らしと経済(令和3年版 情報通信白書のポイント)」によると、DXを進める上での課題でもっとも大きな割合を占めていたのは「人材不足(53.1%)でした。

DXを進める上での課題(日本企業)

出典:総務省「デジタルで支える暮らしと経済(令和3年版 情報通信白書のポイント)

 

とりわけ、「DXの推進に詳しい人材」が不足していることが、大きな問題になっています。

 

外部のコンサルタントやパートナー企業等とタッグを組んでDXを推進している会社は、わずか4%です。

 

一方、DXについて詳しくない人材が、DXを担っている割合が、少なく見積もっても50%程度に達しています。

 

「DX推進の専任部署」がDXを主導している割合は「35%」ですが、知見がある人材がいるかについては不明です。

 

日本では「DXを推進しなくてはならない状況だが、知識・経験のある人材が不在のまま、なんとなくDXに取り組んでいる」状況が、うかがい知れます。

 

DXに取り組む主導者の内訳(日本・2020年)の調査結果

・DX推進の専任部署 35%

・DX専任ではないICT関連の部署 23%

・DX専任ではない経営企画関連の部署 13%

・外部コンサルタント・パートナー企業等 4%

・社長・CIO・CDO等の役員 6%

・ICTに詳しい社員(有志等) 8%

・その他 4%

・取組を実施していない 5%

→DXについて詳しくない人材が、DXを担っている割合が、少なく見積もっても「50%程度」

デジタルトランスフォーメーションに関連する取組の主導者

出典:総務省「デジタルで支える暮らしと経済

 

このような状況でありながら、「デジタル人材の確保・育成に向けた取組」を「特に何も行っていない」と回答した企業は18.5%に達します。

 

約5社に1社は、DX人材の育成・獲得に関する危機意識がないことが、うかがいしれます。

 

2-2. 「顧客に提供する価値・体験」が明確でない状態でDXを推進する

 

「顧客に提供する体験が明確でない状態でDXを推進する」企業が多いのも、DXにまつわる大きな課題の一つです。

 

経済産業省は「『DX推進指標』とそのガイダンス」というレポートの冒頭で、DXにおける課題として、以下の通り、言及しています。

 

「顧客視点でどのような価値を創出するか、ビジョンが明確でない」

DXの取組状況について、よく聞かれるのが、PoC(Proof  of  Concept:概念実証)からビジネスにつながらないといった悩みである。その場合の原因の一つとして考えられるのは、顧客視点でどのような価値を生み出すのか、Whatが語られておらず、ともすると、「AIを使ってやれ」の号令で、Howから入ってしまっていることにある。(また、業務改善・効率化に留まってしまっているケースも多い。)

出典:経済産業省「『DX推進指標』とそのガイダンス

 

かみ砕いていえば、「顧客に提供する価値(≒顧客体験の創造)」に関するビジョンが明確でないまま、「AI活用」や「アプリ化」などの“手段”を前提としたDXを推し進めようとしているのが問題であるということです。

 

本来であれば「顧客に提供する価値・体験」に関するビジョンを明確化するのが“先”です。

そして、ビジョンが明確になった段階で、「利便性の高いサービス」や「これまでにない魅力的な商品」を創出するという順番が正しいです。

 

その順序が逆になってしまっていることを、経済産業省は指摘しているのです。

 

身近な例を用いてご説明しましょう。

 

例えば、お米に関する商品を開発する場合。

以下の通り、2つの商品が考えられます。

・土鍋

・レンジで温めればすぐに食べられる「レトルトごはん」

このとき「ごはんを食べる手段=土鍋」というふうに考えて、土鍋を開発するのは危険な可能性があります。土鍋のように場所を取る炊飯道具は好まれない可能性があるからです

また、ホームキーピングを外注する人が増えているなかで「すぐにごはんを食べたい」というニーズが高まっているのであれば、土鍋は「レンジで温めればホカホカのごはんがすぐに食べられる」というニーズを満たせません。すぐに食べたいというニーズを満たそうとすると、「レトルトごはん」を使う必要があります。

DXにおいては、この「土鍋」が、そのままAIなどの技術を指していると思えばわかりやすいです。

DXとなると「とりあえずAIを導入しろ」といった具合に、「顧客に提供する価値・体験」を考えずに「手段」の検討から入ってしまうケースもあるのではないでしょうか?

DXでは、AIが役立つ場面がありますが「顧客に提供する価値・体験」を創出するうえで「AIという手段が絶対に必要」とは言い切れません。別の手段がより適切である可能性があります。

どのような体験が提供するか。

それをしっかりと決めた上で、その体験を実現できる技術を選定することが大事なのです。

 

思考の順序を誤ると、思ったようなDXをできない可能性があります。

 

この点をじゅうぶんに理解していない企業が多いのが、大きな課題の一つです。

 

2-3.「アナログ業務の一部デジタル化」に留まっている

 

日本には「『アナログ業務の一部デジタル化』に留まっている」企業が多いです。

この点が、日本における「DXの推進」をはばんでいる課題の一つに挙げられます。

 

DXを推進するうえでは「アナログ業務のデジタル化」ではなく「デジタル完結を前提とした業務の見直し」を行うことが大切です。

 

例えば、飲食店が、利用者の拡大を目指したDXの一環として「電子決済システム」を導入する場合。

 

「現金」による支払いを、引き続き可能にするケースが多いです。

 

しかし、そうすると、現金の入出金の確認、お釣りの準備、銀行への入金、出納帳への記載、金庫の用意などの業務が引き続き発生することになります。

 

これに加えて、電子決済システムの利用方法を覚える必要があるため、返って業務負荷が増える可能性があります。これでは、DXを推進する利点が半減してしまうでしょう。

 

つまりこのケースの場合、電子決済システムの導入で「幅広い利用者の拡大」につながるかもしれませんが、業務負荷が高いままです。

 

時間的余裕が生まれないため、新規メニューの開発や、出前サービスの充実などに充てる時間を増やしたりすることができません。「競合優位性が高まった」とは言えない状態というわけです。

 

このように、「アナログ業務の一部デジタル化」に留まっている人が多いのも、日本におけるDXの課題の一つに挙げられます。

 

以上3点が、DXの関する課題です。

 

日本におけるDXの課題3つ

・DX推進に関わる人材が不足している

・DXの「目的の共有」が不足している

・DXなのに「アナログ業務のデジタル化」に留まっている

 

次章で、これらの課題に対する解決策を解説いたします。

3. DXの課題を解決する方法3つ

DXの旗をもち走る人

続きまして、2章で取り上げた課題の解決策を解説いたします。

ポイントは全部で3つです。

 

DXの課題を解決する方法3つ

課題

解決策

  1. DX推進に関わる人材が不足している

外部の支援の下、DXを推進しながら、
DXを推進できる人材を補充・育成する

2. DXの「目的の共有」が不足している

「DXの目的」を社員に共有する

3. DXなのに「アナログ業務のデジタル化」に留まっている

「デジタル完結を前提とした業務の見直し」を行う

 

一つずつ、みていきましょう。

 

3-1. 外部の支援の下、DXを推進しながら、DXを推進できる人材を補充・育成する

 

課題

解決策

  1. DX推進に関わる人材が不足している

外部の支援の下、DXを推進しながら、
DXを推進できる人材を補充・育成する

 

DX人材が不足しているならばDX人材の補充」を行うほかありません。

これは、至極シンプルな解決策ですね。

 

そのためには、「DX推進の経験がある人」を、リクルートサイト経由で雇用したり、「DXに強いコーチ・講師」をインターネット上から見つけ出して、伴走支援を依頼することも選択肢となります。

 

いないのなら、育てる。

育ったかどうかは、DXの遂行を「終えた」と過去形にならない限りは判断がつきません。そのため、DX人材の育成は、事実上DXを推進をしながらとなります。

そのため、勝手に育つことを神に祈り見ないふりをするか、育てるために人間ができることは全部やり切るかの2択となります。

宿題代行的にコンサルタントを雇う場合は、月間1000~2000万円ぐらいで最低限稼働できるチームが来てくれます。大抵は4名程度です。メンバー2名、PM1名、PO(役員)1名こんなところです。

これを10年間雇うと24億円です。この金額より安いと、一般職としては優秀というだけで役に立たない可能性が増します。また宿題代行なので社員は育たず、いつまで経っても何もできないダメな自分たちのまま、となります。ですが、宿題は代行してくれるので着実に前に進みます。

 

DX人材の候補者とは、具体的には、以下のような特徴・スキルに少なくとも関心がなくはない人たちです。どれか1つでも興味があればよいです。いまこの瞬間に できている必要はありません。

 

確保したいDX人材の特徴

・「人間」が好きな人か、営業として過去に実績のあるひと。特に「お客さんが言うものをそのまま提供するだけじゃ、物は売れない」ということを理解している人

・デジタル技術やデータ活用に興味のあるひと(ITパスポートだと心許ないが、取得していないよりはマシ)。技術に対してマニアックすぎる場合は、DXの進捗管理ではなく、技術についての知見を高め続けてもらい、社内専門家(知恵袋、相談役)として活用する。

・各事業部門における業務内容に精通している、もしくは各事業部の業務に精通しているひとと会話できるほどに顔が広い人

・計画を立てて実行できるが、当初の計画にこだわりすぎず、状況変化を踏まえて、目的達成のために計画を捨てられるひと(極めて重要なキーパーソン。いなければ、一番育てなければならない人物)

・大学で論文を書いたことがあるひと。自分が過去にどんな研究をしたか、少しでも覚えていればOK。大卒の半分は、自分が学部で行なった研究を覚えていないため。

・マニュアル仕事はできないが、1回こっきりの仕事を心から楽しめるひと

重要なことは、こういった人材をきちんと育てていくことが重要です。完成している人を採用すれば救われると言うわけではありません。なぜなら、居るのなら、どこの会社も苦労していないから、です。

またリスキリングと称して、むやみやたらに講座を購入する必要もありません。社員に1名10万円まで書籍購入費用を認めるだけで十分です。中古含めると100冊ぐらい購入で上限となりますが、それだけきちんと読める人間は優秀です。真っ先に育成しましょう。

Bethでは、以下のような人材育成をしています。

・新規事業の社内コーチの育成(大手損害保険会社)
・新規事業を担当する部長へのコーチング(大手B2Bの電器メーカー)
・新規事業の作り方の専門家(部長級)育成(大手自動車)
・DX事務局人員の育成(三重県伊賀市)
・社内コンサルタント育成のための論文執筆指導(三重県伊賀市)
・「考えるとはなにか?」という基礎からの指導(長野県庁職員200名)
・デザイン思考導入のためのコーチ(東京都中野区)

特徴は、
「考えるという3文字の意味を、考えるという3文字を使わずに説明できるか?」
「”学術界では、社内研修受講者のうち9割の人間が、1年後には研修内容を実務で実行する気がないと結論が出ている”。こういう結論に至ることが当たり前な構造を明らかにした上で、構造上有効な手を打つ」
といった現実に立脚して実利を得ることを目的としている点です。学習コンテンツを消化してもらうことには興味がなく、実務で結果を出してもらうためだけの人材育成です。

 

DX人材は下記のようなものも参考となります。

・経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン 」 

・独立行政法人情報処理推進機構「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた 企業とIT人材の実態調査

ですが、これらを参考にして中途採用するよりも、より根本的に優秀な人間を育てる方がはるかに早く、安く済みます。なぜなら、みんなこれを見て中途採用に走るのでコストが跳ね上がります。また高い給与を払えないのなら、三流しか雇えないためためです。

であるならば、芽のある人間を育てた方が早いです。

なお、官僚制と科学的管理法が前提として染み付いている企業には、マニュアル人間以外はあまり居つきません。そういった構造側の変化もおこなさなければ、中途採用は採用フィーばかり無駄にすることになります。ぜひ1900年前後の書籍にまで立ち返って我々が縛られている前提を眺めてください。そこにヒントがあります。

3-2.「顧客に提供する体験」を先に考えたうえで「実現する手段」を考える 

課題

解決策

2.「顧客に提供する価値・体験」が明確でない状態でDXを推進する

「顧客に提供する体験」を先に考えたうえで「実現する手段」を考える

 

DXを推進するうえでは「『顧客に提供する体験』を先に考えたうえで『実現する手段』を考える」事が大切です。

 

DXにおける正しい思考の順序

①「顧客に提供する体験(ビジョン)」を考える

②「顧客に提供する体験(ビジョン)」を実現する手段を考える

 

わかりやすい例として「NIKE」のシューズを例に用いてご説明しましょう。

 

NIKEはユーザーに「ランニングするためにワクワクして最高の靴を買う」という体験を提供することを先に考えます。これは「ビジョン」とも言い換えられるものです。

次に、この顧客体験を実現するための手段(=ランニングシューズにどんな機能を実装するか)を考えます。

ビジョンを実現するための手段として、NIKEはapple社とのコラボによる「Nike+iPod Sport Kit」を開発しました。

「Nike+iPod Sport Kit」は、ランニング中の走行距離・時間・走行ペース・消費カロリーなどをiPodやiPhoneに表示させたり、そのデータをパソコンで管理するサービスです。

【NIKEが「Nike+iPod Sport Kit」の商品開発で行った思考の順序】

①:「顧客に提供する体験(ビジョン)」を考える

「ランニングするためにワクワクして最高の靴を買う」という体験価値の提供を掲げる

②:「顧客に提供する体験(ビジョン)」を実現する手段を考える

①を実現するために、シューズの靴底に取りつけたセンサーが収集した「走行距離」や「消費カロリー」などの情報を、手に持っているiPod/iPhoneからチェックできるようにする」という手段を検討する

この「①→②の順序」を遵守すると、ユーザーに喜ばれる商品を開発することができます。

 

DXを推進する際も同じです。

 

「顧客に提供する体験」を先に考えたうえで「実現する手段」を考えると、競合優位性を確立することができます。その結果、売上アップや新規顧客の獲得に成功する可能性が高まります。

 

是非、参考にしてみてください。

 

3-3. 「デジタル完結を前提とした業務の見直し」を行う

 

課題

解決策

3. DXなのに「アナログ業務のデジタル化」に留まっている

「デジタル完結を前提とした業務の見直し」を行う

 

DXを推進するうえでは「アナログ業務のデジタル化」ではなく「デジタル完結を前提とした業務の見直し」を行うことが大切です。

 

例えば、飲食店が、利用者の拡大を目指して「電子決済システム」を導入する場合。

 

・アナログ業務のデジタル化(課題)

 

先述の通り、「現金」による支払いも引き続き可能にしてしまうと、現金の入出金の確認、お釣りの準備、銀行への入金、出納帳への記載、金庫の用意などの業務が残ります。

 

これに加えて、電子決済システムの利用方法などを覚えなければならないため、返って業務負荷が増えてしまいます。これでは、DXを推進する利点が半減してしまいます。

 

・デジタル完結を前提とした業務の見直し(解決策)

 

一方、支払い方法を「電子決済システム」のみに絞り込めば、現金の管理がゼロになります。

 

お金を「数字」のみで扱うようになるため、浮いた時間を、新メニューの開発などに充当できます。

その結果、売上拡大に貢献できる可能性があります。

 

このように、DXを推進する際には、アナログ業務のデジタル化ではなく、「デジタル完結を前提とした業務の見直し」を行うようにしましょう。

 

 

4.DXの成功事例2つ

土に芽が生えた苗

DXの課題を解決する方法について、ご理解いただけたのではないでしょうか。

 

しかし、その一方で「どのような新規サービスを開発すれば、DX的によいのか*」、具体的なイメージが湧かない方も多いのではないでしょうか。(*DX的によい、という目的の設定方法の是非はともかく。ここを気にした方は極めて優秀です)

 

この点に関する理解が浅いと、具体的な施策には、なかなか結びつかないものです。

 

そこで本章では「DXの成功事例」を2つご紹介します。

 

事例をみれば、貴社におけるDXのゴールに関するヒントが得られるはずです。

 

DXの成功事例2つ

・寺田倉庫『minikura』

・ユニメイト自動採寸PWA『AI×R Tailor(エアテイラー)』

 

一つずつ、見ていきましょう。

 

4-1.寺田倉庫『minikura』 

出典:minikura

 

DXの成功事例として、一つ目にご紹介したいのが、寺田倉庫によるトランクルームサービス「minikura」 です。

 

minikuraは、「Web上+自宅」での簡単な手続きで、商品を保管してくれるトランクルームサービスです。

 

通常、アウトドア用品や読まないマンガなどを保管する「トランクルーム」は、以下のような工程が必要になり、手間がかさみます。

 

一般的なトランクルームサービス

①物件探し

②内覧

③利用申し込み

④自宅からトランクルームまで荷物を運搬する

⑤預入完了

⑥(荷物を取り出すとき)

トランクルームに足を運んで荷物を取り出す

 

一方、minikuraは「Web上+自宅」ですべての手続きが完了します。

月額275円から、気軽にトランクルームを利用できる便利なサービスとして、大きな注目を集めているのです。

 

寺田倉庫「minikura」

①Web上で保管したい商品に合ったサイズのボックスを取り寄せる(Web上)

②荷物を詰めて発送する(自宅で待機していればOK)

③預入完了

④(荷物を取り出すとき)

マイページで集荷の予約をする(Web上)

 

minikuraの場合、マイページで「何を預けているのか」をチェックすることができるのも大きなポイントの一つです。「何を預けたのか」覚える必要がないため、モノの管理がしやすくなります。

 

トランクルームというと、アナログなサービスのイメージがありますが、寺田倉庫は倉庫ビジネスのDXにより、競合優位性を確立することに成功しました。

 

寺田倉庫のminikuraは、DXの成功事例として、参考にしたい好例です。

 

“DXに向けた覚悟・熱意”を見習いたい『寺田倉庫』

寺田倉庫は、1950年に米を保管する倉庫を提供する会社としてスタートし、長らく法人向け(BtoB)の倉庫レンタルサービスを手がけてきましたが、創業60年を機に、個人向け(BtoC)の倉庫レンタルサービスを開始しました。その一つが「minikura」なのです。

このとき、寺田倉庫は、主力事業の「売却」も断行しています。そして、この大改革に当たり、社内では大きな反発があり、93%の社員を失う結果となりました。たった7%の社員しか残らなかったのです。

社長は、社内の反発をもろともせず「DXの実現が生き残り戦略」だととらえ、BtoC市場に舵を切ったのです。これは並々ならぬ決断だったのではないでしょうか。

大改革の結果、売上そのものは「1/7」になりましたが、キャッシュフローは8倍になりました。

「顧客が8倍になった」とは言い切れませんが、ターゲットとなる市場が拡大したことは間違いありません。

DXをする際には、まず社長が「何をしたいのか」の思いを明確化することが大切です。

そして、寺田倉庫のように「創業のしなおし」といえるほどの大改革も必要なのです。

まずは社長自身がビジョンを描く。そして。社長の思いに共感してくれる有志を募り、具体化に向けて走り続ける。これが、DXを成功に導く大きなポイントだと、私は考えています。

 

4-2. ユニメイト自動採寸PWA『AI×R Tailor(エアテイラー)』

出典:AI×R Tailor

 

レンタルユニフォーム事業を手がけるユニメイトの「AI×R Tailor(エアテイラー)」も、DXの成功事例です。

 

これまで、レンタルするユニフォームのサイズは、ユーザーによる自己申告で行われていました。

しかし「サイズ違い」が頻発してしまうことで、ユーザーは、スムーズに必要なユニフォームを手に入れられない問題が生じていました。

また、ユニメイトにとっては、サイズを出し直す返品・交換作業に、多大なコストが発生していました。

 

そこで、生み出されたのが「AI×R Tailor(エアテイラー)」というアプリです。

ユニフォームの採寸をアプリ上で行えるものです。

 

ユニフォームを着用する人の

 

・画像データ(背面・左側面の写真)

・基本データ(身長・体重・年齢・性別)

 

を入力するだけで、AIによる身体寸法解析が行われることで「おすすめのサイズ」がわかるのです。

 

ユニフォーム発注のDXにより、サイズ違いによる返品・交換作業にかかわるコストを大幅に減らすことができます。

 

ユーザーにとっては「サイズ発注のし直し」といったストレスがなくなるため、競合優位性を確立できます。

 

ユニメイトのサイズ解析アプリも、DXの好例です。

5. DX推進に関するお悩みは「Beth」が解決いたします

 

ここまでの記事を読んで「DXの課題を解決する方法はわかった。でも、実際にどうやって課題を解決していけばいいんだろう?」と、疑問に思った方もいるのではないでしょうか。

 

「社内のリソースだけで、DXを推進するのは不安」だと感じる方は、BETHまでご相談ください。

 

BETHは、“DX推進パートナー”として、お客様の課題に応じた解決策の提案を行ってきました。

これまでサポートしたお客様は、大手損保会社やプラントメーカーなどのプライム上場企業、400名程度の中小企業、三重県伊賀市、長野県庁、東京都中野区など、さまざまです。

 

BETHが手がけた「DXの推進サポート」事例

・商社の質的転換の検討支援(三井物産)

・デザイン思考とアジャイルの統合によるイノベーション創出(大手損保)

・イノベーション創出のための部長級へのコーチング(トヨタ自動車)

・プライム上場 プラントメーカーのDX戦略策定、および新規事業コンテストの企画運用支援

・組織全体でのDXの理解と、各組織での検討支援(奈良県三宅町)

・行政のDX行動計画の策定、および実行のための事務局の支援(足掛け3年目)(三重県伊賀市)

・その他、DXに関わる講演会の実施

 

例えば、三重県伊賀市に対するDX支援では、以下のようなアドバイスをさせていただきました。

 

三重県伊賀市に対するDX支援のアドバイス例

・DXにあたっては「誰に選ばれたいか?(=どんな人に観光にきてほしいか?)/誰に選ばれなくてもよいのか?」を明確化する

・観光に来てほしい人が決まれば、その人に来てもらうための「手段」を検討できる

・自社にとっての競合相手を定義することが重要

(例:スターバックスにとっての競合はドトールだが、勉強のための場所代としてスタバに行く人たちにとっては図書館も選択肢に入る。よって、スターバックスの間接的な競合は図書館である。従って、図書館の経営で成功しているカルチュア・コンビニエンス・クラブは、スターバックスの競合になりうる)

・DXでは「なんのためにDXするのか」という目的を明確化することが大切。

(「なぜDXすべきなのか」「誰と競争してどれくらい勝つのか」「DXの優先度はどれくらいなのか」等を検討する)

出典:BETH「最終的な「ゴール」はどこなのか?

 

ベストな解決策をご提供できる自信があります。

まずは、お気軽にご相談ください。

6. まとめ

 

いかがでしたか。

DXの課題について、理解が深まりましたでしょうか。

 

ここで、本記事の内容をまとめます。

 

  • そもそも「DX」とは?

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

 

  • 日本におけるDXの課題3つ
  1. DX推進に関わる人材が不足している
  2. DXの「目的の共有」が不足している
  3. DXなのに「アナログ業務のデジタル化」に留まっている

 

  • DXの課題を解決する方法3つ

 

DXの課題を解決する方法3つ

課題

解決策

  1. DX推進に関わる人材が不足している

外部の支援の下、DXを推進しながら、
DXを推進できる人材を補充・育成する

2. DXの「目的の共有」が不足している

「DXの目的」を社員に共有する

3. DXなのに「アナログ業務のデジタル化」に留まっている

「デジタル完結を前提とした業務の見直し」を行う

 

  • DXの成功事例2つ

 

・寺田倉庫『minikura』

・ユニメイト自動採寸PWA『AI×R Tailor(エアテイラー)』

 

本記事が、DXの課題について知りたい方の参考になりましたら幸いです。

 

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