
「DXを推進するにはどんな知識が必要なの?」
「部下にどんな知識を身につけさせればDXを推進できるの?」
このようなお悩みをお持ちではありませんか?
DXに必要な知識を把握して担当者に学ばせることで、DX推進に役立てたいと思う気持ちはわかります。
しかし結論からお伝えすると、もしあなたがDX担当者である部下に知識を学ばせようと考えているなら、学ばせるべき知識はありません。
よくDXに必要な知識として、プロジェクトマネジメントスキル、新規事業の企画力や構築力、IT関連の基礎知識、データサイエンスの知識、AIやブロックチェーンなどの最先進技術の知識、UI/UXへの知識などが挙げられていますが、これらはすでに学び終わっている人が世の中にたくさんいるので、その人を雇えばそれで大丈夫です。
それよりも、DXを推進したいなら、社内の優秀な人材を5人から10人集めて以下のことを身につけて、自社にとって何をするべきなのかをきちんと決めてください。
・大学の論文を書く能力 ・問題解決能力 ・戦略について理解する ・世論操作を理解してコントロールする |
自社にとって何をするべきか決めるとは、自社独自のDXの目的を決めることです。これがDX推進ではとても重要なことになります。
そこで本記事では、DXの専門家で、これまで大手上場企業から行政まで幅広くDX支援をした経験がある、Beth合同会社代表 河上泰之が、DX推進で本当に必要なことについて理解するために、以下のことについてお伝えします。
この記事でわかること |
・DXでは知識を学ぶ必要はない |
DXをちゃんとやりたい人、もしくは、やらせたい人向けの辛口記事です。厳しい内容ですが、DXに本当に必要なものを知りたい人は、最後まで読んでください。
1.知識を身に付けてもDXは推進できない
はじめに、DXの知識に関する正しい考え方を身につけていきましょう。この章では、以下のことについてお伝えします。
・知識を学んでもDXは推進できない ・ただし、知識を学ぶことはDXをやらなければいけない空気を醸成するのには役立つ |
この章を読めば、「知識を学ぶことに時間を費やしいつまでもDXを推進できない」などという事態になることを防げます。
1-1.知識を身に付けてもDXは推進できない
冒頭でもお伝えしましたが、世の中でDX推進に必要とされている知識のほとんどが、あってもなくてもどちらでもいい知識なので、学ぶ必要はありません。
なぜなら、それらの知識は知っている人が世の中にたくさんいるので、雇えば良いだけの話だからです。
例えば、あってもなくてもどちらでもいい知識には、以下のようなものがあります。
・プロジェクトマネジメントスキル ・新規事業の企画力 ・構築力 ・IT関連の基礎知識 ・データサイエンスの知識 ・AI ・ブロックチェーンなどの最先進技術の知識 ・UI/UXへの知識 |
これらは経済産業省が必要な知識として提示しているので、それを参考にしたネット記事などが「DXを推進するために身につけたほうがいい知識」として挙げています。
しかし、正しいと言われていること(経済産業省などが言っていること)と、実践で役立つことは、話が別です。
現に必要とされている知識についての講座完了者がたくさんいるのに、日本ではDXが進んでいません。このことが、知識を身につけたからといってDXを推進できるわけではないことをよく表しています。お金を払えば雇える人たちが知っている知識程度では、DXは推進できないのです。
必要な知識として提示されているだけのものに踊らされて、お金と時間を費やすのは無駄なので、学ぼうとすることをやめるべきです。「DXのために期間限定でこの知識を持っている人材が欲しい」「ここ10年集中的にDXしたい」という場合は、業務委託で十分でしょう。
本当に必要なことは何か、しっかり見極めて身につける、身につけさせるということをしてください。
1-2.ただし、DXをやらなければいけないという空気を醸成するのには役立つ
この章で挙げた知識を強制的に勉強させることは、DXをやらなければならない空気感を醸し出すためにはすごく役に立ちます。
なぜなら、会社が本気で業務で必要だと言っていて、その内容を勉強しなければ、クビだと言われてしまうからです。
例えば、「こういう勉強をしなければ給料下げるよ」とか「勉強しないならボーナス無しね」というぐらいの感じで知識の勉強をしろというと、「DXを本気でやらないといけないんだ」みたいな空気感が醸成されます。
特に、日本の組織人はリスキリングに慣れていて、勉強熱心です。部署を移動することと、その都度必要な勉強をすることには慣れているので、業務に必要なことであれば、みんな勉強します。
なので、もしあなたが「DXを推進する空気感を作りたい」と思っているなら、知識を学ばせるのが有効です。
ただし、あくまでも空気を醸成するだけということを忘れないでください。
2.【真実】DXで知識以上に大事なスキル4つ
DXを推進するためには、大事なスキルがあります。それは、以下の4つのことです。
・大学の論文を書く能力 ・問題解決能力 ・戦略について理解すること ・世論操作について理解し、自らコントロールする力 |
この章を読むと、DXを推進するために本当に必要なこと、身につけるべきこと、身につけさせるべきことがわかります。
2-1.大学の論文を書く能力
DXを推進するためには、大卒者が当たり前に持っている「論文を書く能力」が必要です。
論文を書く能力がないと、漠として与えられたテーマを自分で噛み砕いて問題を設定できないからです。
DXでは、ビジネスや環境の激しい変化に対応しつつ、競争上の優位性を確立するために何をしなければいけないのか、漠然とした範囲の中から自分たちで問題を切り出して設定しなければいけませんが、論文を書く能力がないとこれができません。
大学の卒論では、漠然とした範囲しかない中でテーマを決めるところから始まり、何をやるべきか噛み砕いて論文という1つの成果物を作り上げるので、大卒者はこれができます。
「誰かが定めてくれた問題なら解けます」程度の人にはDXを推進できないので、DXを推進する際は、大学の論文を書く能力がある人、大卒者を担当者においてください。
【大卒者が全員論文を書けるわけではないので注意!】 大卒者なら誰でも論文を書く能力を持っているわけではありません。そもそも大学で論文をちゃんと書いていることが大前提です。論文をちゃんと書いたことがあるなら、大学の偏差値は関係ありません。 また、論文とレポートの違いが理解できていない人は、大卒者とは言えません。論文は漠然とした範囲、テーマから何をやるべきか自分たちで噛み砕いてやるのに対して、レポートはこれについて論じよと問題が切り出されています。 レポートではなくて、論文を書けることが重要です。 |
2-2.問題解決能力
DXでは、問題解決能力が不可欠です。
DXでは、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化、風土を変革し、問題を解決することが求められています。会社を変えていくためには、問題を定義する能力のみならず、それを解決する能力がセットで必要なのです。
問題解決能力がないと、例えば以下のようなことが起こります。
・今はお腹が空いていないけど、将来お腹が空くかもしれないからチャーハンを頼む ・まだ何の問題も起こっていない中において、副社長と役員が「社長にはビジョンがないから数年後が心配だ。社長に勉強してもらおう」と悩む |
これらは、問題の設定ができない上に、顕在化していない問題を問題にしていて、どう考えても問題解決能力が欠如している状態です。
こんな判断をする人に、プロジェクトマネジメントや新規事業の企画などできません。ましてや、トランスフォーメーションは生物学用語で「変態」の意味ですが、毛虫が蝶々に変わるほどの大きな変化をもたらすことができるわけがないのです。
DXでは、問題解決の基礎力があれば、ある程度何とかなります。推進する人材には、現状と理想との差を解く問題解決能力を身につけさせるべきですし、当然、上司となる人も問題解決能力は不可欠だということを理解してください。
2-3.戦略について理解すること
DXは、戦略の概念を理解していないと推進できません。
なぜなら、戦略について理解できていないと、「誰を倒せばいいのか?」「どこの領域で戦うのか?」について、正しく判断できないからです。自社のDXの目的を定義するときに、「自分たちの会社は誰に勝つ必要があるのか」「自社のマーケットを取り囲む脅威や変化とは一体何なのか?」について考える必要がありますが、戦略について理解していないと、考えることができません。
経済産業省が定めるDXの定義は、以下の通りです。
経済産業省が定めるDXの定義 |
企業がビジネス環境の激しい変化に対応して、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位を確立すること |
出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」
経済産業省が定める定義を、「目的」「手段」「やるべきこと」に分解して読み解くと、以下のようにわかりやすく意訳できます。
【経済産業省のDXの定義を分解して読み解く】
「経済産業省の定義」本文 | 意訳 | |
<目的> 企業がビジネス環境の激しい変化に対応して、 競争上の優位性を確立すること | → | 他社との競争に勝つために |
<手段> 顧客や社会のニーズを基に、 製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに | → | 売るもの、売り方を お客様が買うものに変える |
<やるべきこと> データとデジタル技術を活用して、業務そのものや 組織、プロセス、企業文化・風土を変革する | → | 売るもの、売り方を変えるから、 当然業務のやり方も変えましょう。 もちろんITを使って。 |
要するに、経済産業省の定義は、以下のように言っています。
DXは「他社との競争に勝ち続けること」を目的として進めてください。その目的を達成するために、売るもの、売り方を変え、それに伴って、業務のやり方も変えましょう。このご時世なので、当然ITを使ってください。 |
DX詳細はこちらの記事をお読みください。【完全ガイド】DXとは?事例や要素をわかりやすく解説!
戦略の定義は、以下のとおりです。
戦略の定義 |
自社のビジネスの成功にとって都合の良い行動を競合や他社にとらせるために、自社はどのような行動をするか |
戦略について理解できると、DXで競合他社に勝つことについて考える時に、必ずしも商品で相手を倒す必要はない、ということがわかってきます。
多くの企業が商品という戦場を選んで戦っていますが、例えばお金を借りてきて買収するのも選択肢の1つです。現に世界のGAFAは、商品力で勝負しているのではなくて、この方法で戦っています。
このようにどこの領域で戦うのかも大事ですし、そもそも戦う必要があるのかも大事な話になります。ベンチャーとしてGoogleを潰そうと考えるのではなくて、ベンチャーを立ち上げてGoogleに売却したいと考えると、戦う必要はなくなります。
戦略の仕方はいろいろあるので、選択肢として何があるかや、自社の場合どんな戦略を立てれば勝てるかについて考えられるようになることが、DXではとても大事になります。
戦略について詳しくは、こちらの記事をお読みください【実例あり】新規事業の戦略とは?成功するための実践的アプローチ
2-4.世論操作について理解し、自らコントロールする力
最後に大事なこととしてお伝えしたいのが、世論操作について知ることがDXではすごく大切だということです。
踊らせ方がわかれば、広告のイメージがつくし、売れるので、大きなビジネスができます。
例えば今、自分たちが何に踊らされているのかを考えてみてください。DXの知識について調べているあなたは、「DXをやらなければいけない」というものに踊らされている可能性があります。
そういうことを知っていると、みんながDX、DXと言っている時に、DXコンサルを使ったらお金になることがわかります。
お金になるとわかっているDXコンサルは、全く価値がない知識を、「DXにはこれが必要ですよ」などと言って売りつけますが、ほとんどの人が新規事業やビジネスを作ることに慣れていないので、買う必要がないのに買ってしまうのです。
これはすごく馬鹿らしいことで、いらないものを買わない、つまり踊らされないことがすごく大事になります。
自分たちが何か欲しいと思い込まされていたり、DXをやらないといけないと思い込まされていたりする仕掛けはどうなっているのか、世の中をコントロールするための仕掛けをちゃんと理解すると、踊らされることがなくなるし、踊らせる側に回ることができ、売ることができるのです。
自分たちが誰かを踊らせる力、これをPRや広告、プロパガンダなどと言いますが、このことについて学び、世論を操作することを知り、DX推進に役立ててください。
3.DXで大事なスキルをインプットする方法
2章でお伝えした4つの大事なスキルを開発するためのインプットとしておすすめなのが、以下の2つです。
・YouTubeを見る ・日経新聞を読む |
特にYouTubeは、最新の情報が手に入るので、とてもおすすめです。特に初心者は、誰かが教えてくれるようなインプット方法がいいので、耳と目から情報を得られるYouTubeで学ぶのはとてもいいです。
身に付けたいスキルに関する動画を視聴してみてください。
なお、耳と目から情報を得られるといえば、研修やオンラインスクールも悪いわけではありませんが、研修は研修講師しかできないレベルの人がやっているので、役に立たないことが多いです。加えて研修やオンラインスクールは、1対複数人数なので、あまり意味がありません。1対1じゃないなら、講師が話しているのを録音録画して流すのと同じなので、YouTubeで十分です。
その上で部下に身につけさせる方法としては、以下の方法がベストです。
・仕事としてやらせて覚えさせる |
基本的には手を動かさないと身につかないので、仕事としてやらせるのが1番効率的です。
また、中級者以上には、書籍によるインプットもおすすめします。基本的に書籍は、中級者以上におすすめのインプット方法なので、初心者には向いていません。
中でも絶対に読んで欲しいのが、リチャード・P・ルメルト著「良い戦略、悪い戦略」です。
出典:Amazon
【書籍情報】
書籍名:良い戦略、悪い戦略 著者:リチャード・P・ルメルト 出版社:日経BP 発売日:2012/6/23 ページ数:421ページ |
「良い戦略、悪い戦略」の購入はこちら
この本には、生き残るためには何をすればいいかが書いてあります。良い戦略と悪い戦略の違いを示し、良い戦略を立てる手助けをしてくれる1冊です。まさにDXを推進する上で必要なことが書かれています。
【インプット方法を探す際は詐欺に注意】 インプット方法を選ぶ際に重要なのは、実務で使わないことを「DXに必要な知識」として売っている詐欺みたいな人たちに騙されないことです。 ここまで読んでお分かりの通り、DXで必要と言われている知識を学ぶことに、時間とお金を費やすのは無駄です。そんなことよりも、2章でお伝えした大事なことを身につけるために、今すぐ無料でできるYouTubeを見て学んでください。 その上で、自分たちでは無理そうだと思ったら、「お金を払えば雇える人たちが知っている知識程度でDXなんてできない」という事実をちゃんと言ってくれる専門家の話を聞いてみてください。 私たちBeth合同会社でなくても構いません。しっかり見極めて相談して、最短距離でDXを推進してください。 |
4.知識を身につけるのは簡単だが、実践までは難しい
ここまで、DXではあってもなくてもどちらでもいいような知識が必要ないことや、知識以上に大事なことについてお伝えしてきましたが、この章では、DXの知識とDX推進について、その本質にもう一歩迫り、他では伝えていない厳しい現実をお伝えします。
DXの知識があることと、実践できるかどうかは、まったく別の話です。
なぜなら、知識とは選択肢でしかないからです。選択肢を知っているからと言って、実践できる、実践するとは限りません。
例えば、知識として「ハワイのあのパンケーキ屋さんが美味しい」というのを知っている話と、実際にハワイのパンケーキ屋さんに行けるかという話は、全く別の話です。お店の存在を知識として知っていても、ハワイに行くためにはパスポートやお金、時間が必要です。
これをDXに置き換えると、DXの知識を持っていても、それを実践するためには、以下のようなものがないと実践できないし、しません。
・DX業務に専念する時間 ・DXという難しいことに取り組むモチベーションを上げるためのボーナス |
知識がある人に実践させるためには、最低でも上記の2つが必要です。
DXは、従来の業務と兼務して推進できるほど甘いものではないので、まずDX専任にすることが大事です。そうすれば、DXのための時間を十分確保できます。
その上で、ちゃんとインセンティブを与えなければいけません。例えば、世界最大手の自動車メーカーでは、アイデア1件につき500円、内容が良ければ50,000円を与えます。実践できる人にはちゃんとお金で報いているので、みんな知識を身につけた上で実践します。
業務時間も、お金も与えないで、「会社が儲かるためのことをやれ」と言っても、やるわけがありません。そんな当たり前のことに気づかずにDXを推進しようとしても、うまく行くわけがないのです。
あなたの会社はどうでしょうか?今一度よく考えてみてください。
5.DXを最短距離で推進したいなら専門家に相談しよう
ここまで読んで、
「DXで大事な4つのことを効率よく身につけてDXで実践させるためにはどうすればいい?」
「部下が率先して実践してDXを推進する環境を作るのは我が社には難しそう」
と感じた人がいるのではないでしょうか。知識を習得するだけではDXを推進できないことがわかり、記事を読む前以上にDXの難しさを感じていることと思います。
DXに関して困りごとがある方や、最短距離でDXを進めたい場合は、Beth合同会社にご相談ください。
DXの専門家で、大手上場企業から行政まで、さまざまなジャンル、規模のDX推進を支援してきた実績をもとに、伴走支援でDX推進をサポートします。
・DXについて気軽に相談したい ・戦略について自社では学べそうにないので教えて欲しい ・コーチング的に支援してほしい ・詐欺的なコンサルを見分けられないので騙されないか不安 |
このような方は、ぜひお気軽にご相談ください。
6.まとめ
本記事でお伝えしたかったことは、主に以下の3点です。
・DXでは知識を学ぶ必要はない ・DXで知識以上に大事なことが4つある ・知識だけ身につけるのは簡単だが、実践までは難しい |
そもそも調べていただいて出てくる「DXに必要な知識」は、すでに学び終わった人たちがいるので雇用すれば大丈夫です。そうではなくて、他に大事なこと(大学の論文を書く能力、問題解決能力、戦略の理解、世論操作の方法を知ることを学び、自社にとって何をすべきなのかをちゃんと決めることが重要です。
無駄なことはやる必要はありません。本当に必要なことを見極めて、身につけていきましょう。