「DXに必要なユーザー視点って一体なんだろう?」
「DXで必要なユーザー視点を知って、DXをうまく推進させたい!」
このようにお考えではありませんか?
DXのユーザー視点というと、UXやCXについて語られる場合が多いですが、我々の考えるユーザー視点は少し違います。
我々が考えるDXのユーザー視点とは、以下の通りです。
DXに必要なユーザー視点として重要なのは「いかにユーザーがお金を払わずにはいられない体験を届けるか」ということです。
もう少し説明すると、
・自分にとって価値がある
・幸せな気持ちになれる
・嫌なことから逃れられる
・持っているだけでなんだか満足する
というような感情が湧き上がってくると、本能的に良いと感じ、ついお金を払って手に入れたくなるのです。
数字ばかり見ていると、他社よりも価格がどうだとか、継続率がどうだといった議論になりがちですが、DXのユーザー視点は単なる数字で測れるものではありません。
顧客側から言うと、KPIマネジメントなんて知ったことではありません。企業がガッツリ儲けるかどうかなんてことは、顧客にとっては一切どうでもいいことなのです。
※顧客という言葉に違和感を感じた方は後述するので一旦読み進めてください
このことについて実感していただくために、私たちがよくする質問が2つあります。
1つ目は「1万円は好きですか?」という質問です。
多くの人が「好きです」と回答すると思いますが、ではその中に1万円のサイズを言える人がどのくらいいるでしょうか?
私は、未だかつて、1万円札の縦と横の長さを言えた人に出会ったことがありません。
何が言いたいかというと、人は1万円という物理的な物、あの紙(サイズ、匂い、硬さ、柄)が好きなのではなくて、1万円でできること、要するに体験に興味があるのです。だからみんな、お金が好きだと言いながら、お金のサイズになんて全く興味がないわけです。
つまり、提供者側が1万円の紙のサイズにこだわってもあまり意味がなくて、1万円でできる体験が価値の本質になる。なので、体験が大事になってくるわけです。
もう1つの質問です。「真っ暗なスーパーと明るいスーパー、どっちがいいと思いますか?」
この質問には、ほとんどの人が明るい方だと回答します。トマトの赤が鮮明に美味しそうに見えるのは、断然、明るい方だからです。
しかし企業は、脱炭素やコスト削減を目的に、電気を消したりします。これは立派な企業努力ですが、残念なことに、顧客からすると全く関係ない話ですよね。
「暗くて商品が見えにくく、なんだか美味しくなさそうに見えるトマトだけど、環境保全を頑張っている会社だから仕方がない。このスーパーで買っておこう」
「発色は少し悪そうに見えるな。もしかしたら少し傷んでるかもしれないか不安だけど、環境保全のために仕方がない。」
と、このように考えて意思決定出来る人は正直そうとう稀です。
それよりも
「大事な主人や息子のために、少しでも美味しくなるように出来るだけ新鮮な食材を選びたい」
「なんでわざわざ新鮮じゃなさそうな食材が揃っているスーパーで買い物しないといけないの?」
「環境保全が大事なのは分かる。けど家族の笑顔や健康には変えられない。。。」
と、スーパーでトマトを買う価値を考えると、明るくてトマトの発色が綺麗に見えるお店で買い物した方が、美味しく食べるイメージができるし、野菜が新鮮に見えて嬉しくなるので、明るいお店で物を買うことを選ぶわけです。
つまり、スーパーの顧客にとって重要なのは体験であって、コスト削減や環境配慮など企業内部の努力ではない、ということです。
※あくまでDXのユーザー視点の話で、環境保全を無視していいという話ではありません。環境保護をしながら顧客体験も向上させなければならないから、大変なのです。
ここまでだけでも、DXで本当に必要なユーザー視点について、気づきがあったかもしれませんが
本記事を読み進めれば、一般的な記事が伝えていない、DXで本当に必要なユーザー視点について、深く理解することができます。
<この記事でわかること> |
・DXで本当に必要なユーザー視点とは ・ユーザー視点を重要視して成功した事例 ・DXはユーザー視点で考えるだけではなく、顧客の価値観についても考えることが重要 ・DXのユーザー視点はデジタル前提で実現しよう ・DXのユーザー視点を深く考えられる実践方法 |
記事の最後では、考え方やアイデアのまとめ方など、実践的な方法もお伝えしています。ぜひ最後まで読み進めてください。
1.DXで本当に必要なユーザー視点とは
すでに冒頭でもお伝えしていますが、「DXで本当に必要なユーザー視点とは」について、さらに理解を深めていきましょう。
ユーザー視点について、正しく認識することは、本当に重要なことです。なぜなら、売れる商品やサービスを作るためには、現状と顧客が手に入れたい理想を理解し、その差分を埋めるために役立つ具体案を検討していくことが欠かせないからです。
そこで本章では、以下のことについてお伝えしていきます。
・DXのユーザー視点とは「いかにユーザーがお金を払わずにはいられない体験を届けるか 」という視点
・ユーザーの視点とCXやUXの違い
・DXのユーザー視点を理解するために必要な道具が揃っているのがデザイン思考
DXで本当に必要なユーザー視点を理解すれば、これから推進しようとしているDXや新規事業で失敗する確率を下げることができます。
1-1.DXのユーザー視点とは「いかにユーザーがお金を払わずにはいられない体験を届けるか」という視点
ユーザー視点とは、その名の通りUser(利用者)から見た視点で、いかにユーザーにとって便利な体験を届けるかについて考える視点のことです。
例を挙げて、具体的にイメージしていきましょう。
出典:YouTube ベスちゃんねる「世界一お金をかけない新規事業の作らせ方」
上の画像は、ベッドメリーを赤ちゃんに提供する親(企業)と、実際に使う赤ちゃん(ユーザー)です。
ベッドメリーを提供する親から見ると可愛い人形が回っていて良さそうに見える(画像左)が、実際に使う赤ちゃんから見ると、人形のお尻がくるくる回っていて、親目線とはかなり違うように見えます(画像右)。
「赤ちゃん目線ではただ人形のお尻が回っているだけのなので、これはダメだ。人形の顔が見えるように下向きに吊るさないと。。」
このように考えたあなた。実は間違っています。
大事なのは
ユーザーからどう見えるのか
と
見えた結果をどう評価するのか=どう感じるのか
本当に赤ちゃんは人形の顔が見えるように下向きに吊るしてほしいのか?
お尻が回っているのはつまらないのか?
これを、考えることこそがDXに必要なユーザー視点なのです。
DXのユーザー視点ではそれぞれの価値観や見え方に沿って、個別に捉えていく必要があります。
「見えた結果をどう評価するのか」「見えた結果どう感じるのか」
ここまで整理できてから、ユーザーがお金を払わずにはいられない体験とは何かを検討していきます。
このことがよく分かる事例を2章で紹介したあとに、3章でさらに深掘りしてお伝えしていきます。
ぜひ最後まで読み進めてください。
1-2.ユーザー視点とCXやUXの違い
先程お伝えした通り、DXのユーザー視点とは「ユーザーにどう見えていて、どのように評価しているのか」「そのユーザーにとっての体験」がキーポイントだとお伝えしました。
勘のいい人は、「CX」や「UX」も確か同じような意味だったよな?と混乱していてるのではないでしょうか?
結論から申し上げると、CXだろうとUXだろうと、大した違いはないので、単語に惑わされないでください。
単語ではなくて、自分たちはどの範囲の体験をよくしようとしているのか、を議論して決めてください。その方が単語の意味なんかよりはるかに重要です。
CXは、ある商品やサービスの認知、購入、利用、廃棄までの幅広い体験です。
ディズニーランドで遊ぼうと思って駅を降りたらその駅がゴミだらけだったらどうでしょうか?変えるきもゴミだらけなら?せっかくの楽しい遊園地での体験も、微妙なものになってしまいます。顧客の体験とは幅広いものなのです。
UXとは、商品自体やサービスを利用している時の体験です。利用時のみなので、CXよりは狭いです。
CXについてだけもう少しだけ補足すると、CXのCustomerはお金を払う人、Userは使う人ですが、それぞれの体験を明確に分けることは難しいです。
ベッドメリーの場合は、Customer(親)とUser(赤ちゃん)は別ですが、お金を払う人と使う人が一致する場合も、もちろんあります。
そうなるとCustomerの体験の中にUserの体験が入ってきて、ごちゃごちゃになってきます。
よくわからなくなった時、それぞれの言葉を日本語として整理してみてください。まず、お金を払ってくれる人を顧客、使う人を利用者と日本語で置きましょう。
※ですので、冒頭で述べたスーパーでトマトを買う主婦は顧客と表現したのです。
利用者が利用するときは、購買体験は関係ないですよね。単純に利用するシーンの話をしているのだったら利用者の体験という意味で言葉を使ってるなとわかります。
重要なのは、そのように理解をしたうえで、議論の中心である利用者の体験についての議論を深めることです。
そこで、「利用者の体験を考えるのならUXですよね」と単語単位の意味の定義で戦うことに意味があるのは専門家のみです。実務家にとっては大した意味はありません。
CXやUXといった用語については、これが分かれば十分です。
次章でDXのユーザー視点を実践する際に最も役立つ考え方について解説していきます。
1-3.DXのユーザー視点を理解するために必要な道具が揃っているのがデザイン思考
デザイン思考とは、人の体験に徹底的にフォーカスした問題解決方法です。
この思考法は「いかに人の役に立つか」について考えることから、DXのユーザー視点を理解するために必要な道具が揃っていると言えるでしょう。
デザイン=人の役に立つ デザイン≠見た目の良さ |
デザイン思考とは、現状を理解し、理想を描き、買ってくれるアイデアを作るための手法の集まりです。
役に立たないものは買ってもらえないので、ここで重要なのは、見た目の良さではなく、人の役に立つかどうかということになります。
具体的にイメージできるように、デザインの悪い例をご紹介します。
上の画像は、セブンイレブンのコーヒーマシンです。このコーヒーマシーンを見て、違和感を覚えませんか?
そうです。後付けの説明が多数されています。
かっこよさを中心に設計したのか、それとも誰が利用するのか利用者の設定を間違えたのか、原因はわかりません。しかし、結果として日本語で説明を付け足さないと使い方がわからないのです。こういう状態を 「デザインが悪い」 といいます。
ここで質問です。このコーヒーマシンのように、後付けの説明をしないと使えないコーヒーマシンと、後付けの説明なく使えるコヒーマシンがあった時、あなたならどちらを購入しますか?
答えはもちろん後者ですよね。
このように、デザインが悪いと人の役に立たないし、人に買いたいと思ってもらえません。
つまりビジネスの根幹である「買う」という行為を引き出す「デザイン」は、DXを成功させる上でとても重要な鍵であり、いかに便利な体験を届けるかという視点であるユーザー視点もまた、同様であるということができます。
人の役に立つものを作る、デザイン思考。「いかにユーザーに便利な体験を届けるか」という視点であるユーザー視点を理解すために、デザイン思考についても理解を深めることはおすすめです。
デザイン思考についてさらに詳しく学びたい方はこちらもご覧ください。
日本で一番分かりやすくと大人気です。
2.ユーザー視点を重視して成功した事例
DXにおいていかにユーザー視点が重要であるかをさらにイメージしやすくするために、ユーザー視点を重視して成功した事例をご紹介します。ここでご紹介する事例は、以下の2つです。
・アキレスシューズ「瞬足」
・AI翻訳機「ポケトーク」
2つの大ヒット商品は、どのようにユーザー視点を取り入れ、商品化したのでしょうか。
2-1.アキレスシューズ「瞬足」
出典:アキレス瞬足クラブ
2003年に発売された「瞬足」は、「コーナーで差をつけろ!!」を開発テーマに掲げて開発された、学童用シューズです。
子供の気持ちになるために、開発者が小学校の運動会を観察した結果、生み出されたこの商品。
運動会の徒競走でカーブで転倒することが多い子供達を見て、「転ばずに最後まで力いっぱい走らせてあげたい」と思ったことが開発のきっかけでした。
日本の多くの小学校が左回りのトラックだったため、左回りに特化した左右非対称ソールというアイデアを商品化した「瞬足」は、ピーク時には年間650万足、ここ5年間は年間約450万足売れている超ロングヒット商品となりました。
ジュニアシューズのターゲットである幼稚園児、保育園児から小学6年生は、日本全国でトータル900万〜1000万人いるとされているので、単純計算すると2人に1人は瞬足を持っていることになります。
2023年2月に累計販売数8,000万足に達していることからも、瞬足がメガヒット商品であることがお分かりいただけると思います。
※参考:日経クロストレンド「大ヒットシューズ『瞬足』の今後は?アキレス社長が明かす」
2-2.AI通訳機「ポケトーク」
出典:POCKETALK
ポケトークは、AI通訳専用機器です。もともと海外旅行のお供として重宝されている商品ですが、現在では接客やビジネスシーンでも活用されています。この商品は、通訳専用デバイスで、ボタンも2つしかないシンプルな作りです。
しかし、スマホがあるこの時代に、なぜ専用デバイスなのかと思いませんか?専用デバイスである理由は、2つあります。
1つはターゲットとしているユーザーの年齢層です。
海外旅行に行く人、特にご高齢の方を想像してみてください。「翻訳アプリケーションをインストールしてください」とか、「空港に行って海外のSIMカードを買って、ピンでSIMカードを出して、SIMを入れて、スロットをとじて、アクチベーションしてください。」といったことのハードルの高さが想像できると思います。
このような複雑な工程なしに、買ってくればすぐ使えるの利便性の良さが、専用デバイスである理由の1つです。
もう1つの理由は、マイクの性能です。専用デバイスにすることで、マイクの性能を一定にそろえることができました。音声入力にとって、マイクの性能はとても重要ですから、マイクの性能を揃えるために、専用デバイスをソフトウェア会社が開発したのです。
スマホを持っていると言ってもマイクの性能はそれぞれでしょうし、インターネット回線がないと機能しないとなると不便ですよね?
世界中どこに行っても電源を入れれば使えて、操作がとても簡単なAI翻訳機「ポケトーク」。ユーザーが使う時のことを考え、ユーザー視点で開発された商品だからこそ、愛され続けています。
3.DXはユーザー視点で考えるだけではなく、顧客の価値観についても考えることが重要
2章の成功事例をご覧頂いて、ユーザー視点を理解して、どのように反映するのかというのが、なんとなく理解出来たのではないでしょうか?
1章でも少し触れましたが、DXでは、ユーザーからの見え方とユーザーからの評価をセットで考えることが重要です。
そこでこの章では、より実践的に考えられるように、以下のことについてお伝えしていきます。
・ユーザーの価値観と評価
・DXのユーザー視点は見え方と価値観を正しく捉えないと間違った方向にいく
この章を読めば、DXで本当に必要なユーザー視点についてより理解が深まります。
3-1.ユーザーの価値観と評価
ユーザー視点とユーザーの価値観は合わせて理解することがとても重要です。
ユーザーの評価は、ユーザーの価値観によって分かれるため、一度思考を柔軟にしましょう。
・ユーザーからの見え方
・ユーザーの価値観(見えた結果どう評価するか、どう感じるか)
この2つは全く別の概念であることを認識してください。
ここで再び、ベッドメリーの例をもとに具体的に考えていきましょう。
【ベッドメリーを使用する赤ちゃん視点】
出典:YouTube ベスちゃんねる「世界一お金をかけない新規事業の作らせ方」
「お尻が回っているだけだと赤ちゃんにとってつまらないから、下向けに吊るさないと。。」
このように感じた方の価値観は大人な価値観を持っているといえます。
かくいう私も最初はそのように考えてしまいました。
お尻がくるくる回っているこの状況を、どう評価するか、どう感じるかは、ユーザーの価値観によって異なります。
みなさんは「おしりたんてい」というキャラクターをご存知ですか?
「おしりたんてい」は、2012年にポプラ社から出版された児童書「おしりたんてい」の主人公で、顔の形がお尻に名探偵です。「おしりたんてい」は、子供にとって魅力あふれるキャラクターで、NHKでアニメ化されたことにはじめ、映画やDVDが出れば大ヒット。本は累計900万部を突破する超ヒットシリーズです。
しかし、大人の中には「なにこれ?」「これのどこがそんなに面白いの?」と思う人もいるでしょう。
しかし子供にとってはおしりたんていは魅力あふれるキャラクターであり、ベッドメリーのおしりが回っている状況もなんだか納得はいきますよね。
子供にとって「おしり」というのは最高に笑える題材なのかもしれません。
(他にも クレヨンしんちゃん、おしりかじり虫 などたくさん挙げられます。)
これがまさに、ユーザーの価値観の違いです。
価値観によって意見が分かれるということは、
・ユーザーにどんな世界が見えているのか
・それを見たユーザーはどのように評価するのか(価値観)
この2点について理解しないと、狙ったものを打ち出しにくいということです。
このことから、DXにおいてユーザーからの見え方とユーザーの価値観は絶対に重視するべきです。ユーザーにとって役に立つことを探すことで、限られた時間や資金も効率よく使うこともできます。
ユーザーからの見え方と価値観を正しく捉えることができれば、ユーザーの笑顔が見えてくるはずです。
3-2.DXのユーザー視点は見え方と価値観を正しく捉えないと間違った方向にいく
DXのユーザー視点では見え方と価値観を正しく捉えることができないと、間違った方向にいく可能性があります。
この2点を正しく捉えられないと、ユーザーにとって便利な体験を提供することはできないし、もしユーザー視点を正しく捉えたとしても、その評価はユーザーの価値観によって分かれるからです。
ユーザー視点と顧客の価値観をうまく捉えることができず、失敗した事例があります。
2006年にマクドナルドで発売された、サラダマックをご存知ですか?「もっとヘルシーな物が食べたい」という消費者の声から生まれた商品です。
しかし、このサラダマックは、大失敗に終わります。
原因は、ユーザー視点を読み違えたことでした。
ユーザーはヘルシーなものを求めていると思いサラダマックを提供しましたが、実際にユーザーがマクドナルドに求めているものは、背徳感や罪悪感だったのです。
ユーザーからすると、体に悪いものと分かっていながらも、簡単に旨いものが食べられるあの感覚がたまらないわけです。
この背徳感や罪悪感がより一層マクドナルドを美味しくさせるのではないでしょうか?
逆に中途半端に健康に気を使うぐらいなら、マクドナルド以外にも優秀な選択肢はたくさんあります。
ユーザー視点からすると、「今日は夕飯作れないから。」や「今は時間がないから」といろいろと理由をつけて正当化して食べれるマクドナルドが最高なのであって、その時に食べたいのはサラダマックではなかったのです。
このように、ユーザー視点と顧客の価値観を正しく捉えることができないと、DXや商品開発、新規事業は失敗します。ユーザーの声を分析すると同時に、人間の価値観と価値観による感情を理解することの重要性を忘れないでください。
4.DXを推進するときはデジタル前提で実現しよう
では実際にDXのユーザー視点を考えて新規事業や商品開発を行う際はもちろんデジタルを前提で考えましょう。
経済産業省が発表しているDXの定義でも、そのように明言されています。
改めてDXとはなにかについて整理したものが以下となります。
そもそも、経営上デジタルだとコストがかかりにくいし、何をすればいいかが明確なのがデジタルのいいところです。このようなことを理解していないと、この先、競合においていかれます。
そもそもDXとは、競合に勝ちたい、売上を上げたい、利益を上げたいというのが目的でしたよね。
それを踏まえていくと、これからの時流を理解しておかないといけないとそれこそ取り残されていきます。
具体例を上げて説明すると、例えば 元々倉庫業を営んでいた寺田倉庫はテック企業へと大変身しました。
価格競争の激化に苦しんでいた寺田倉庫は、2012年に創業家以外の人材を社長に迎え、さまざまな改革を行いましたが、中でも革新的だったのが、デジタルを活用した新規事業「minikura」です。
次世代のトランクルームを目指し、デジタル技術を活用した個人向けの新しい物品管理サービスを始めました。その後「minikura」は順調に成長し、現在では法人向け物流プラットフォームの開発・提供まで幅が広がっているということです。
DXの定義に戻りますが、売り物・売り方をユーザー視点で買いたいと思えるものに変える。その際は、当然データやデジタル技術を活用したデジタル前提で進めていきましょうね、ということになります。
間違えないでいただきたいのですが、デジタルを使った商品やサービスを作れということではありません。
他社との競争に勝てる商品やサービスを考えて、デジタルやデータを活用することを前提として達成する手段を考える。検討した結果、IT技術が一切必要なければ無理に導入する必要はありません。
ただほとんどの場合、ここまでインターネットが普及している現在において、デジタル技術の活用することを前提として考えたほうが企業として成長しやすいので、毛嫌いせずに受け入れていきましょうということです。
5.DXのユーザー視点を考えられる実践方法
最後に、実際にDXでのユーザー視点を深く考えられるように、以下の実践方法をご紹介します。
・ユーザー視点を知る一番の方法は「ユーザー候補に話を聞く」
・「ユーザーにとって価値があるのか」アイデアを評価するための観点5つ
ユーザー視点を実際に検討する際に活用してください。
5-1.ユーザー視点を知る1番の方法は「ユーザー候補に話を聞く」
ユーザー視点を知るには、ユーザー候補に話を聞くのが一番です。
「こんなアイデアあったら買う?」
こんな質問をダイレクトにぶつけてみるといいでしょう。お金を払ってでも欲しいと思うアイデアを作っていきます。
そして話を聞いた上で、顧客の見えている現状と価値観を知り、理想を定義して(問題定義)問題解決と業務の両面から仕組みを構築させていきましょう。
新規事業や商品開発をするために、担当者を会議室に閉じ込めておいても意味がありません。外に出て顧客に話を聞くことに時間を割ける環境を作るといいですね。
5-2.「顧客にとって価値があるか」アイディアを評価するための観点5つ
アイディアを評価する際は、「このアイディアは顧客にとって本当に価値があるのか?」ということが最も重要なことです。そこで以下の5つの観点からチェックしてみてください。これらの観点から何度もアイディアを考え、統合し、一貫性のあるアイディアにまとめることが重要です。
①お金を支払う顧客や実際に利用するユーザーは明確か
②インタビュー前に反応がわかるほどに、彼らの価値観/インサイトを理解できているか
③お金を払うほどに価値がある事象/課題/喜びを捉えられているか
④顧客の価値観や体験をまるで自分ごとのように生々しく語れるか
⑤既存の競合とは違う新たな体験を提供できているか
個々の買ってくれそうなキャラクターがわかるくらい、細かくユーザーを絞り込んだ上で、どんな課題があって、どう解くのかを考えていくことがとても大事です。ここで挙げた5つの観点についてチェックを入れることができれば、顧客にとって価値があるかどうかということについて、議論や判断ができるようになっていきます。
6.まとめ
本記事では、DXで必要なユーザー視点について、一般的な記事が伝えていない観点から「本当のユーザー視点」についてお伝えしました。
最後に、DXに必要なユーザー視点とは何かについておさらいしておきましょう。
DXに必要なユーザー視点とは、「いかにユーザーがお金を払わずにはいられない体験を届けるか」という視点のことでした。
また、ユーザー視点での評価は、評価するユーザーの価値観によって分かれるということもお伝えしました。
あなたの会社のDXが前に進むことを願っています!