「自治体のDXって何をすればいいの?」
「自治体のDXって具体的にどんな事例があるの?」
このような疑問をお持ちではありませんか?
DXが民間で必要とされていることは知っているけど、自治体のDXって一体どんなことを行って、どのような成果が得られるか、わからない人も多いと思います。
自治体のDXは、大きく分けて2種類あります。
※この2種類のうち、どっちをやるべきなのか?自治体間の競争の過去と違った話、過去と違う緊急性について先に知りたい場合は、先に3章を読んでください。
「総務省が法令で定めていることを完了する」ことをやるためにやるべきことは
・法務省が強制するデジタル化への対応
です。これは、どの自治体も最低限やる必要があります。
次に、「自治体の生き残りをかけて人口減少の中で他の自治体との競争する」ためにやらなければいけないことは、2つあります。
・自治体が進めたい職場内のデジタル化(競争するための時間を作るために)
・他の市区町村に勝つための行政施策の検討と実施段階でのデジタル活用
です。業務プロセスだけでなく、組織そのものを変革するとともに、競争上の優位性を確立します。もちろん前提として、デジタルを活用して、です。
また、自治体DXには、定量的な目標が存在しています。
総務省の自治体戦略2040構想研究会が平30年7月発表した「自治体戦略2040構想計画研究会第2次報告〜人口減少下において満足度の高い人生と人間を尊重する社会をどう構築するか〜によると自治体DXの定量的な目標は、以下のようなものとしています。
「自治体の職員は半分にして、十分に仕事をこなしてね」ということですが、肌感感覚では事務職は、70%削減する必要があります。
なぜなら、小学校や保育園、消防や現場で道路を直すなど、現場には人材がたくさん必要だからです。それも含めての半分だから、事務職なんてほとんどいらないのが実態になります。
そういった形で、事務職の人材を極限まで減らすということを意図しているのが、そもそも自治体のDXです。
具体的には、
・ふるさと納税プラットフォームの独自開発(大阪府泉佐野市)
・ChatGPTの試験導入(神奈川県横須賀市)
などの事例があり、本記事ではこの2つの事例についても詳しくご紹介します。
この記事でわかること |
・自治体DXとは ・総務省が強制するデジタル化への対応 ・自治体DXをなぜ進めないといけないのかの前提知識 ・自治体DXを推進する3つの到達目標・自治体が進めたい、職場内のデジタル化 ・他の市区町村に勝つための行政志向の検討と、実施段階でのデジタル活用 ・自治体DXの必要性を一言で言うと”存続可能性を1日でも伸ばしたいかどうか” |
この記事を読めば、自治体DXの必要性を実感できるし、納得して自治体DXを推進できます。ぜひ最後まで読み進めてください。
1.自治体DXとは
そもそもDXとは、日本国内で言うと経済産業省が民間企業に対してやり始めたものです。「激しい変化に対応しながら、他社との競争に勝つという目的を達成するための手段として、DXを推進しましょう。」ということを言っています。
自治体のDXは、大きく分けて2種類あります。
・総務省が法令で定めていることを完了する
・自治体の生き残りをかけて人口減少の中で他の自治体と競争をする
「総務省が法令で定めていることを完了する」ことをやるためにやるべきことは
・法務省が強制するデジタル化への対応
です。これは、どの自治体も最低限やる必要があり、具体的な内容は総務省「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」で示されており、こちらをご覧いただければよく理解できると思います。
詳しくは、2章でもお伝えします。
次に、「自治体の生き残りをかけて人口減少の中で他の自治体との競争する」ためにやらなければいけないことは、2つあります。
・自治体が進めたい職場内のデジタル化(競争するための時間を作るために)
・他の市区町村に勝つための行政施策の検討と実施段階でのデジタル活用
自治体が進めたい職場内のデジタル化の具体的な内容については、総務省「自治体DXの推進」の下部にさまざまな事例が掲載されています。詳しくは、5章でお伝えします。
他の市区町村に勝つための行政施策の検討と実施段階でのデジタル活用については、各自治体やるべきことが異なるので、それぞれ考える必要があります。詳しくは、6章でお伝えします。
次の章では、まず総務省が法令で定めていることを完了するためにやるためにやるべき「法務省が強制するデジタル化への対応」についてお伝えしていきましょう。
2.総務省が強制するデジタル化への対応
1章でお伝えした総務省が強制するデジタル化への対応とは、主に以下のような対応を指します。
自治体トランス・フォーメーション(DX)推進計画が定める重点取組事項6つ |
・自治体の情報システム標準化 ・共通化・マイナンバーカードの普及促進 ・セキュリティ対策の徹底 ・自治体の行政手続のオンライン化 ・自治体のAI・RPAの利用促進・テレワークの推進 |
この記事では以下の2つについて必要な理由や背景について解説していきます。
・自治体の情報システム標準化・共通化
・自治体の行政手続のオンライン化
2-1.自治体の情報システム標準化・共通化
自治体の情報システムの標準化・共通化とは、地方公共団体の情報システムの標準化を推進することです。要するに、どの自治体も同じシステムを使ってね、ということをいっています。
その背景には、住民記録システムが各自治体独自でカスタマイズされていて統一されていないことがあり、その結果、以下のようなこと課題が生じています。
・維持管理や制度改正時の改修等に置いて地方公共団体は個別対応を余儀なくされ負担が大きい
・情報システムの際の調整が負担となり、クラウドによる共同利用が円滑に進まない
・住民サービスを向上させる最適な取り組みを、迅速に全国へ普及させることが難しい
こうした課題解決のために、自治体の情報システムの標準化・共通化が進められています。
詳しくは、総務省のこちらのページをご覧ください。
2-2.自治体の行政手続のオンライン化
自治体の行政手続きのオンライン化は、買えばいい話であり、それほど複雑ではありません。
オンライン化したい業務は何なのかについて決定したのちに、ベンダーを選定して導入します。
ただし、総務省の「自治体の行政手続きのオンライン化」によると、行政手続のオンライン化に取り組むに当たっては、国の法令等に基づくもののみならず、自治体が独自に実施する手続も含めて検討することが必要です。
行政手続のオンライン化の取組みに当たっては、
・推進体制の構築
・オンライン化に取り組む手続の検討
・仕様検討・調達・サービスの導入・運用
の4つのフェーズに沿って、それぞれ作業項目を整理し、手順書を参考に進める必要があるため、「自治体の行政手続きのオンライン化」にある手順を確認した上で進めましょう。
3.自治体DXをなぜ進めないといけないのかの前提知識
「自治体がデジタル化を進めないといけないことはなんとなくわかるけど、そんなに急ぐ必要ある?」
「他の自治体に勝つことが目的ってことだけど、なんで勝つ必要があるの?」
このように疑問を感じて、心から納得していない人もいるのではないでしょうか?
自治体DXの必要性について、実は日本で今話題のリニア新幹線計画を深く知ることで地方自治体のDXの必要性を十分に理解していただけると思います。
今後日本の人口分布は、リニア新幹線の開通によって、東京、名古屋、大阪に集中していくので、地方の労働人口がさらに減少していくことが見込まれます。
そうすることによって起こる変化を知ることで地方DXの必要性について十分理解できるはずです。
この章を読むと、以下のことがわかります。
・リニア計画によって起こる日本の人口の変化
・リニア計画の裏に隠された政府の本音
3-1.2050年には日本のほとんどの地域で人口が50%以下になる
深刻な少子化が問題となっていることは、誰もが知るところですが、実際に日本のどの地域で、どのくらいの変化が起こるかを把握している人は少ないのではないでしょうか?
下の日本地図は、2050年の人口増減状況を色で表したものです。
<国土全体での人口の低密度化と地域的偏在が同時に進行(2010年→2050年)>
出典:国土交通省国土政策局「国土のグランドデザイン2050参考資料」
地図のほとんどを占める紫色の部分は、人口が50%以上減少する地域です。わずかにある黄色は、人口が0%以上50%未満、減少します。数か所にしか見られない赤い箇所が、唯一人口が増加する都市です。
この地図からわかる通り、2050年、日本はほとんどスカスカ状態になることが見てとれます。
さらに読み解くと、
・人口が半分以下になる地点が現在居住地域の6割以上を占める
・人口が増加する地点の割合は約2%である
・人口規模が小さくなるにつれて人口減少率が高くなる傾向が見られる
ということがわかります。
つまり、「半数の職員数でも担うべき機能が発揮される自治体」を定量的な目的としている理由は、人口が減るからです。人口が減ると税収が減るので、自治体の職員が維持できなくなり、職員数が減ります。ほとんどの地域で人口が半分以下になるので、職員も当然半分になる、というのがこの定量的目的が定められた理由です。
3-2.リニア新幹線によって人口が3県に集中する
人口減少については理解している人もいると思いますが、どうして人口が増加する都市があるの?と疑問に思う人もいるのではないでしょうか?
ここからは、日本人のほとんどの人が気づいていない政府の実行計画について話していきましょう。
リニア計画をご存じですか?東京、名古屋、大阪を繋ぎ、極めて近距離の感覚で移動できるようにリニアで繋ごうという計画です。「なんて便利なんだ!」というのが一般的な感想だと思いますが、実は恐ろしい事実が隠されています。
どういうことか、わかりますか?
「東京と名古屋と大阪以外は消えてしまってもいいよ」
このリニア計画は、政府がこのようなことを言っているも同然なのです。(ぶっちゃけた話をすると)
このことに気づいている静岡県は、リニア構想に反対の姿勢を示しています。
東京、名古屋、大阪以外の1,715の市町村は、果たしてこのことに気づいているのかいないのか?国は、1,715の市町村を見捨てるつもりで、決してカバーしてくれない未来が待っていることは間違いない事実です。だから自治体は自分たちで強くならないと生き残れない。これが自治体DXを本当にやらなければいけない前提なのです。
総務省が、「半数の職員でも担うべき機能が発揮される自治体になる」というのが定量的な目的と言っていますが、これはリニア計画を踏まえ真剣に考えて言っていることです。
リニアで繋ぐけど、それ以外の大規模投資の予定なんてかけらもないのが現実です。ばら撒く地方交付税もありません。ここでお伝えしていることは、決して大袈裟なことではないのです。
今いる職員が半分になっても回せるようになろう。AIでもロボットでも使えるものはなんでも使ってね。
生き残る生き残らない関係なしに、これくらいのことをやってね、ということを国は言っているのです。
「半数の職員」と言われていますが、具体的な数字は単純な割り算と引き算で計算できます。
今の所属の自治体の職員数を半分に割ってみてください。そこから今現場作業をしてくれている人(き教師、インフラ整備の現場仕事の人など)の人数を引いてください。残りの人数が、事務系の仕事に割り当てられる人数です。まずはその計算をしてから、じゃあどうするかってことを真剣に考えてください。
その数字が達成できるのであれば、方法論は正直なんでも構いません。
自分の自治体を残したいと思う気持ちが強い方は、5章と6章で「自治体の生き残りをかけて人口減少の中で他の自治体との競争する」ためにやるべきことをお伝えします。ぜひこのままお読み進めてください。
4.自治体DXを推進する3つの到達目標
自治体DXを推進する際は、以下の3つを到達目標として考えるといいでしょう。
1.総務省が強制するデジタル化への対応
2.自治体が進めたい、職場内のデジタル化
3.他の市区町村に勝つための行政施策の検討と実施段階でのデジタル活用
自分の自治体では、どの目標を設定するかについては、首長と行政職員の間で3つのうちどれを進めるかについて話し合う必要がります。
ここでは、それぞれの目標を達成することで何が実現できるか把握し、どの目標を自分の自治体DXの目標とするのか、複数目標にするのか、判断する材料にしてください。
4-1.総務省が強制するデジタル化への対応
総務省が強制するデジタル化(地方公共団体情報システムの標準化など)への対応は、2章でお伝えした通りです。
自治体DXにおいて、最低限の目標となるのが、「総務省が強制するデジタル化への対応」で、具体的には、
・自治体の情報システム標準化・共通化
・マイナンバーカードの普及促進
・セキュリティ対策の徹底
・自治体の行政手続のオンライン化
・自治体のAI・RPAの利用促進・テレワークの推進
がありますが、
期限内にいかに安い方法を選択するか
やるべきことはこれだけです。
4-2.自治体が進めたい職場内のデジタル化
自治体が進めたい職場内のデジタル化には、RPA導入や手計算のExcel化などがあります。
絶対にやらないといけないというわけではなく、議論の余地がありますが、
・人の採用が困難な時
・働きやすさを追求したい時
・働くためのモチベーションを上げたい時
は、採用するべきだと言えるでしょう。
ただし、
・役所は雇用の受け皿としての役割がある
・地方の労働者はITリテラシーが高くないという現実がある
という観点から、デジタル化すればそれでいいというわけにはいかない難しさがありますが、「半分の人数で今と同じことを実現する」ことを定量的な目標と言われていることから、全業務をシステム前提として作り直す必要があることは確かだと言えます。
詳しい内容については、5章でお伝えしています。
4-3.他の市区町村に勝つための行政施策の検討と実施段階でのデジタル活用
実際に実行するのが一番難しい目標はこれです。
しかし、この目標を達成できた際には、自治体DXの目的「競争上の優位性を確立する」ことや、定量的目的である「半分の職員数でも担うべき機能が発揮される」ことを実現できると思っていいでしょう。
「他の市区町村に勝つための行政施策の検討と実施段階でのデジタル活用」は、本気で生き残ることを決めた自治体のみが目標とするべきであり、必然的に4-1から4-3までの全てをセットで行うことになります。
進め方の流れは、以下の通りです。
1.優先順位と業務割合の決定
2.定量的な目標の設定
3.定性的な目標の設定
4.戦略の決定
5.施術の決定
6.ターゲットごとの新たな施策の検討
7.提供に向けた構築8.ローンチ
進め方の詳しい内容については、こちらの記事をご覧ください。
勝つための行政施策の考え方については、6章でお伝えしています。
5.自治体が進めたい、職場内のデジタル化
「自治体の生き残りをかけて人口減少の中で他の自治体との競争する」ためには、時間にゆとりが必要です。そのために自治体が進めたい職場内のデジタル化には
・RPAの利用促進
・ChatGPTの活用
などがありますが、そもそもインターネットが普通に使えるといいよね、という話が前提としてあります。行政機関では、LGWANという行政専用のコンピューターネットワークを利用しているため、セキュリティー面ではメリットは大きいものの、一般社会との繋がりが難しいデメリットがあります。
その点も踏まえつつ、自治体が進めたい職場内のデジタル化についてお伝えします。5-3章では、ChatGPTの事例もご紹介します。
5-1.RPAの利用促進
業務効率を測る際に欠かせないのが、RPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務自動化です。RPAを利用促進すると、以下のようなメリットがあります。
・繰返し作業やミスが許されない作業を減らすことができる(精神的負担の軽減)
・業務負荷の分散化できる
・超過勤務時間の削減等によるワークライフバランスを向上させることができる
・入力ミスの軽減と正確性の向上できる・業務プロセスの可視化ができる
例えば、兵庫県神戸市では、「無収入が条件の各種制度への申告を市民税に集約し、申告内容の確認・審査を自動化した事例では、
・国⺠健康保険や介護保険など、市提供サービスには、無収入であることを条件とする様々な制度があり、 それぞれの窓口で行っていた無収入申告を、すべて市⺠税の申告(0申告)に集約
・オンライン申請データと課税システムのデータをデータ連携基盤上で統合し、本人情報確認と審査を自動化
を図りました。
その結果、審査・登録作業の完全自動化と電子申請の推進により年間約660時間の削減を実現しました。将来的に電子申請率の向上や、市⺠税の申告(0申告)への誘導による更なる削減(年間約7,300時間)が期待されているということです。
5-2.ChatGPTの活用
ChatGPTの活用は、必須事項です。
突然ですが、ここまで読んでくれたあなた、にプレゼントをお渡ししましょう。この国は、おそらくChatGPTを使うのが前提になります。なので、ChatGPTを使おうとしない自治体からは転職した方がいい、と言っても過言ではありません。
そんなやばい地域に家とか不動産を持っていたら、財産的損害を個人が被ることになります。「この自治体は生き残れない」と思ったら、見切りをつけることも大切です。それくらいの競争が、これからの日本では起こる、とうよりも、もうすでに起こるっています。
北海道夕張市は、自治体として破綻し、人口が半分、職員も半分になりました。そんなことが、これからあたりまえに起こります。
ChatGPTの話がいまだに出ていない自治体はもう無理なので、逃げた方がいい。そのくらいの覚悟や競争力を持ってやろうとしているのが、自治体DXなのです。
5-3.神奈川県横須賀市【ChatGPTの試験導入】
自治体DXで今、最も注目を集めている「ChatGPT」の導入。
自治体で業務に初めて「ChatGPT」を導入したのが、神奈川県横須賀市で、2023年4月20日から、市役所庁内で対話型人工知能(AI)の「ChatGPT」の試験導入を開始しました。
この実証実験は、
・文章の作成
・文章の要約
・文章の誤字脱字チェック・アイデアの創出など
の場面でChatGPTを活用することを想定して開始しました。
ChatGPTは、自治体専用の連絡・情報共有ツール「LoGoチャット」に機能を連携する形で活用します。
例えば、「横須賀市のデジタル化推進するキャッチコピーを10個考えて」と質問すると
「デジタルで繋がる横須賀の未来へ」
「飛躍する横須賀のデジタル時代」
のように、アイデアを出してくれます。
しかし、情報漏洩などを心配する声も聞かれるChatGPTの導入。そこで、活用に当たっては、以下のような点を徹底しているといいます。
・個人情報を扱わない
・機密情報を扱わない
・ChatGPTへの入力情報は蓄積しない(二次利用されない方式)
・最後は人が判断する
ChatGPTの導入について、横須賀市長の上地克明市長は、「業務効率化で生まれた時間を、人にしかできない仕事に使って欲しい」として、今後の活用に期待を寄せています。
なお、横須賀市では1ヵ月程度実証実験をしたのち、有効性が認められた場合には本格運用を開始するということです。
ChatGPTを活用して業務プロセスが効率化できれば、自治体DXの定量的目標である「半数の職員数でも担うべき機能が発揮される自治体」の実現に近づき、競争上の優位性を確立することに繋がりそうです。
6.他の市区町村に勝つための行政施策の検討と実施段階でのデジタル活用
他の市町村に勝つために…ここまでやるには、他の市町村との比較ということになるので、他の都市を見に行けるような時間に余裕がある人材を生み出さなければなりません。
そのためには、業務効率化である2章の総務省が強制するデジタル化と5章の自治体が進めたい職場内のデジタル化が実施できていることが前提になります。
この章では、勝つための行政施策とは、勝つためにどのような考え方をしなければいけないのか、についてお伝えします。
6-1.人口のパイを取り合い(働いている人の住民税か法人税を伸ばすと税収が増えることが大前提)
他の市区町村に勝つための行政施策は、具体的にこれだと言える明確なものは正直ありません。市区町村に戦い方はそれぞれです。ただ、大元となる考え方はあります。
それは、
戦うとは人口のパイを取り合うこと
と言うことです。
今後、人口は減少する一方なので、今後、基本的に人は取り合いです。
他の市区町村に勝つための行政施策の検討と、実施段階でのデジタル活用では、人を取るため(人口を増やすため)にはどうすればいいかを考えていく必要があります。もっと言うと、働いて税金を納めてくれる人と法人をいかに取ってくるかがメインになります。
もちろん人と法人の両方を取りにいってもいいし、片方でも問題ありません。方法論は問いませんが、人が1人以上住んでいて、税収が上がるということが大前提になります。そのためには、子供政策的なものを隣町と同じレベルでやっても意味がありません。
間違っても、「役所の窓口でPayPayを導入する」といったレベルの施策のことではないので、注意しましょう。 窓口でPayPayが使えるようになっても、「引っ越してこよう」とはなりませんよね。人口のパイを取り合うとは、「引っ越してこよう」と思えわせるような施策を指すことを念頭においてください。
成功例をあげると、兵庫県明石市は、出産したい大人たちをたくさん呼んでくるという政策を実行しました。その結果、出生率が上がりましたが、これから子供を産みたい人や妊婦さんを意図的に呼んできたので数字が上がるのは当然の結果と言えるでしょう。しかも、子供を産みたい人は大抵の場合所得が高いので、当然税金を支払う能力があります。このようなサイクルをぐるぐる回していくと、人口が増えることに、税収が増えることに繋がっていきます。
6-2いつか必然的に競争には巻き込まれる
「いつか必然的に競争に巻き込まれる」
これは、他の市町村との競争を選ばなかった自治体、つまり、推進目標として2章や5章のフルコースを選ばなかった自治体へのメッセージです。
競争を選ばなかったとしても、遅かれ早かれ戦わざるを得ない状況に立たされることをお伝えしておきましょう。他の市区町村に勝つための行政施策の検討と実施段階でのデジタル活用を推進する自治体の周辺自治体は、必ず戦いに巻き込まれます。
「人口のパイを取り合うなんて無理だよ」「自分たちは戦わない」と思っていても、隣町がやり始めると一気に人を取られるので、自分たちも政策を立てて対抗せざるを得なくなるからです。競争とはそういうことなのです。
実際に、明石市が人を周辺から取ったため、周辺自治体も総合計画を必然的に変えました。
接している市区町村がやっても人を取られるし、そのまた隣の市区町村がやっていてもやっぱり人を取られます。多分100Km県内くらいの市区町村が何かをやりだすと、人が取られる可能性が高いので、必然的に競争に巻き込まれます。
つまり、いずれ競争に巻き込まれるのだったら、競争するために真剣に業務を減らして、人員を競争に割き、早く立ち上がった方がいいと言えるでしょう。
6-3.大阪府泉佐野市【ふるさと納税プラットフォームの独自開発】
出典;泉佐野市ふるさと納税寄付サイト「さのちょく」
「他の市区町村に勝つための行政施策の検討と実施段階でのデジタル活用」の具体的な事例をご紹介します。
大阪府泉佐野市は、2020年11月に独自のふるさと納税プラットフォーム「ふるさと納税3.0」をスタートしました。
その結果、開始以降ふるさと納税の寄付額が増加し続けています。具体的には、2021年度113億4700万円、2022年度128億4500万円で、2年連続100億円を突破しました。
その上、代行業者を通してふるさと納税を受け取る際に差し引かれる手数料が差し引かれないので、独自プラットフォームを通じて納税された寄付金を全額受け取ることを可能にしています。
泉佐野市のふるさと納税プラットフォームは、従来のふるさと納税とは仕組みが異なり、ふるさと納税の新しい形を取っているのが特徴です。
泉佐野市のふるさと納税「ふるさと納税3.0」は、ふるさと納税型クラウドファンディングといって、寄付者の意思で企業や個人事業主を応援し、返礼品を受け取ります。ふるさと納税制度を活用したクラウドファンディングで資金を調達し、目標額を達成すれば、新たに地場産品を創り出す事業として開始し、できた地場産品を、返礼品として届けるというシステムです。
この仕組みには、寄付者、事業者双方にメリットがあります。
寄付者には、
・街づくりに参加できる
・地方から日本を元気にできる
・返礼品を誰よりも早く受け取れる
というメリットがあります。
一方事業者には、
・寄付金を原資とした補助金を受け取れる
・補助金で新たな事業展開や製品を生み出すことができる
・今後の計画的な受注が見込める
と言うメリットがあります。
泉佐野市長の千代松大耕市長は、
「コロナウィルス襲来、深刻化する世界情勢など、さまざまな課題が立ちはだかっているが、そんな我が国の経済を立て直すためには地域から元気になっていかなければいけないと考えている。」
「ふるさと納税3.0のような取り組みは、どの地域、どの自治体でもできる取り組みなので、全国の自治体に拡がればと思っている。」
と語っています。
*参照:https://event.rakuten.co.jp/furusato/crowdfunding/project/2023/0087/
7.自治体のDXの必要性を一言で言うと”存続可能性を一日でも伸ばしたいかどうか”
「〇〇なんてなくなればいい!」
今お勤めの自治体を〇〇に当てはめて、大きい声を出してみてください。
心の底から大声でいえますか?実際に言葉にしていると、やましさがありませんか?やっぱりちょっと口ごもりますよね。
この気持ちが、自分の自治体を残したいという気持ちです。
このやましさがきっかけで、その地域を残すために自治体DXをやろうと思うことが、本当の根幹です。
この気持ちに素直に従って本気で戦っていきましょう。
残したいのだったら競争する。競争するなら本気でやるしかありません。
8.まとめ
本記事では、自治体DXについて、詳しくお伝えしました。
最後に、自治体DXの到達目標についておさらいしておきましょう。
1.総務省が強制するデジタル化(地方公共団体情報システムの標準化など)への対応
2.自治体が進めたい、職場内のデジタル化(RPA導入や手計算のExcel化など)
3.他の市区町村に勝つための行政施策の検討と、実施段階でのデジタル活用
生き残りたいと考えている自治体がやるべきは、1から3のフルコースです。
並大抵のことではありませんがこちらの記事を参考に、ぜひ進めてください。あなたの自治体が生き残れることを願っています。