DXで得られる効果と期待できること|推進の経営判断ポイントも紹介

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私が書きました 河上 泰之
両手から広がる光

「DXってどんな効果があるの?」
「DXを推進して得られるものが大きいなら推進したいけど、実際どう?」

このような疑問をお持ちではありませんか?得られる効果がわからないと、推進するべきか判断できないですよね。

あまり語られてはいないですが、DXを推進して得られる効果はズバリ

「倒産する確率を下げること」です。

誤った認識として

・業務効率化
・生産性向上
・コスト削減

などがありますが、上記で語られているのは、あくまで「効率化」や「デジタル機器を投入すること」を目的としており、本来のDXの目的である「競争性優位の確立」を置き去りにして推進されていることがほとんどです。※外部環境の変化や本来の目的を達成するための手段として検討がなされ導入されている場合は別です。

正しいDXを推進すると、人材不足問題の解消、目的達成のためのデジタル化、新たな収入源の確保などが期待でき、今多くの企業が抱えているであろう課題を解消できるので、倒産する可能性を下げることができます。

ただし、率直に申し上げて、DXは中途半端にやっても意味がありません。DXは、創業し直しや新しく会社を作るくらいの気概を込めてやるときちんと結果が出ますが、そうでないのであれば、やめておいたほうがいいです。

DX推進で得られる効果は本来、絶大的なものです。
この効果を得るためには相応の努力とコストが必要であり、自社なりの目的を定めたり、経営陣の意思を明確にしたりするなど、やらなければいけないこと、学ばなければいけないノウハウがたくさんあり、DXの知識がない、DXを絶対にやり抜く気持ちがない場合、推進するのは難しいでしょう。

DXの教科書.comでは、DXで学ばなければならないノウハウについて、わかりやすく解説しています。

そこで本記事では、以下のことについてお伝えします。

<本記事でわかること>
・DXの効果と期待できること
・DXの効果が実際に出た具体例
・DXに効果がないと感じるのはやり方が間違っているから
・DXの費用対効果は合っているのか
・DXを推進するべきか経営判断するための3つのポイント
・DXは推進するべき、ただし課題意識なく取り組むくらいならやらない方がいい
・本気でDXを推進したいならコーチング型コンサルティングがおすすめ

DXの効果について把握し、推進するべきか判断するために、ぜひ最後まで読み進めてください。

1.DXの効果

DXを推進すると、どのような効果が得られるのでしょうか?冒頭でもお伝えしましたが、DX推進の効果は、以下のとおりです。

倒産する確率を下げることができる

なぜこの効果があるかというと、以下の3つの理由があります。

・現在の業務を見直すことで必要な人員の数が減る
・自社にとって本当に必要な仕組み化を見極め、目的を達成する
・新たな事業を始めて現金が手に入る

DXを推進するかどうか決めるために、まずはDXの効果とその理由について詳しくみていきましょう。

1-1.DXの効果は「倒産の確率を下げること」

DXの最大の効果であり、唯一の効果と言えるのが、「倒産する確率を下げること」です。言い換えると、法人格として存続し続けられる可能性を上げることができます。

そもそもDXの目的は、競合との競争優位性を確立することです。このことについては、経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」 で明言されています。

なぜ倒産する確率を下げることができるかというと、DXを推進すると、

・現在の業務を見直すことで必要な人員の数が減る
・自社にとって本当に必要な仕組みを見極め、目的を達成する
・新たな事業を始めて現金が手に入る

以上のことが期待できるからです。

「会社が倒産しないためには、自社は何をしないといけないのか」を設定し、登る山を決めてそれに向かって施策を講じることで、上記のような目標を達成することができ、会社が倒産しないという効果を得ることができます。

1-2以降は、「〇〇だから倒産する確率を下げられる」の〇〇部分について掘り下げていきます。

※経済産業省が発信する「DXの定義」について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

1-2.現在の業務を見直すことで必要な人員の数が減る

DXを推進すると、必然的に現在の業務を見直すことになり、必要な人員の数を減らすことができます。

業務を見直してデジタル前提に置き換えることで、情報の整理を行う人間が必要なくなるからです。

例えばファミリーマートの無人決済コンビニ。2021年3月に第1号が誕生してから、着々とその店舗数を増やしています。昨今の少子高齢化に伴う人材不足により、コンビニ業界も人手不足が問題となっている中、無人決済コンビニはレジで会計する人間の雇用を不要にしました。また、在庫管理を自動化することで、トレンド商品や新商品を柔軟かつ迅速に把握し、入れ替えることを可能にしました。

このように、DXを推進して現在の業務を見直し、デジタル前提に置き換えることで、必要な人員の数が減り、今後さらに深刻化が予測されている人員の確保という課題に左右されにくくなります。

1-3.自社にとって本当に必要な仕組み化を見極め、目的を達成する

DXでは、目的を達成するために、自社にとって本当に必要な仕組み化を見極めるという考え方が重要です。

そもそもDXは業務改革ではなく、単にデジタル化して業務を効率化させることが目的ではありません。DXでは自社の目的を達成するために必要な手段としてシステム導入を行い、デジタル前提で業務マニュアルを書き換えて、仕組み化する必要があるからです。

なので、その目的に関係のないシステムやデジタル化は本来不要です。

例えば、コスト削減や業務量縮小を目的にペーパーレス化や電子契約を図ろうとする企業がありますが、やるならプリンターのリースを終了するくらいのレベル感でやらないと意味がありません。少しでも紙が残るのであれば、紙の管理とデジタルの管理が混在し、仕事量がむしろ増えることになります。これでは、DXではありません。

DX推進では、このような過去やってきたデジタル化とは一線を引く覚悟を持ってシステムの整理や導入するため、自社にとって本当に必要なデジタル化を見極めることができます。

これまでシステム屋さんに勧められるがままにシステムを入れていた企業は、たくさんあると思います。しかしDX推進では自社で目的を決めて、必要な手段について検討してシステム導入するわけですから、その姿勢を見直さなければいけません。

※DXのシステム導入について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

1-4. 新たな事業を始めて現金が手に入る

DXを推進すると、新たな事業を始める機会を得ることができ、新規事業を始めれば、それによって現金が手に入ります。

DXは「創業しなおし」といっていいほどのもので、既存の事業を残しながら新規事業を始める、または、既存の事業はやめて新規事業を始める、という選択が必要です。

現に多くの企業が、実は以下のように形を変えています。

・電気屋→ECサイト運営会社
・家具屋→ECサイト運営会社
・レストラン→デリバリー専門キッチン
・保険会社→営業担当がつかない、全てデジタルで完結する保険会社
・銀行→ネット銀行

DXとはデジタル・トランスフォーメーションの略です。

トランスフォーメーションとは、生物学用語で「変態」を意味します。毛虫が蝶に変わるほどの大きな変化をするのがDXです。

よく、DXを推進すると業務を効率化できると勘違いしている人や記事がありますが、それは間違いで、既存業務の業務効率や作業工程を変えるだけでは変態とは言えず、それはDXの本質ではありません。

DXを推進し、新たな稼ぎ口を作る。創業し直しとも言える大変態を遂げる。

これこそがDXであり、倒産の可能性を下げることにつながっていく最大の山であると言えるでしょう。

2.DXの効果が実際にでた具体例

DXの効果が実際に出た事例を把握すると、DXが成功した時のイメージがしやすくなります。

ここでは、以下の事例をご紹介します。

・人手不足を解消した事例(佐川急便)
仕組み自体を変えた事例 (テスラ)
・既存ビジネスの常識を打ち破り新規事業で成功した事例(カルチュア・コンビニエンス・クラブ/Netflix)

それぞれみていきましょう。

2-1.人手不足を解消した事例

EC市場の拡大や、少子高齢化に伴い、人手不足が深刻化していると度々話題に上がる物流業界。業界の多くの大企業がDXを進めていますが、ここでは佐川急便の「人手不足を解消した事例」をご紹介します。

佐川急便では、配達する品物の個数や配達件数が増加しているのに対して、再配達の増加による運送側の負担の増大や労働力不足が課題でした。また2024年4月にはドライバーにおける残業時間の上限が設定されることもあり、ドライバーの人手不足はさらに深刻化することが予想されます。

そこで、佐川急便では以下の3つの業務に新たなシステムを導入することで、生産性の向上に取り組みました。

・庫内業務
・ドライバー業務
・オフィス業務

1つは庫内業務。これまで人が行なっていた作業をロボットによる作業に移行しました。具体的には、物流センター内の商品の取り出しや梱包作業、センター内の移動や検品などの作業の一部をロボットによる業務に置き換えることで、人手不足を解消しました。

また、人の作業をロボットに置き換えたことにより余った人員を、人手が不足していた作業に投入することで、配達業務の効率化を実現しました。

2つ目はドライバー業務。データとアルゴリズムを持つ企業と連携して、デジタル伝票やAI、IOTを駆使し、セールスドライバーや宅配パートナーの生産性を向上させました。

さらにオフィス業務では、自社開発したAI-OCR等を活用し、人事、総務、経理、法務からなるバックヤード業務の更なる効率化に成功。人手不足による事務側の課題を解消しました。

このように佐川急便では、テクノロジーによる省力化、自動化を推進し、物流という社会インフラの安定供給を維持しています。

参考:佐川急便「DX戦略

2-2.仕組み自体を大幅に変えた事例

続いて、生産の仕組み自体を大幅に変えて生産性を向上させ、競争上の優位性を確立した、米テスラ・モータースの「ギガファクトリー」の事例をご紹介します。

現在、上海・ドイツ・テキサスに開設しているテスラの大規模工場「ギガファクトリー」では、世界最大のギガプレスマシンを導入することで、自動車ボディーの作り方を革新し、生産工程の大幅な削減を実現させました。

生産工程を大幅に削減できた要因は、大きく以下の2つにあります。

・ボディに必要なパーツが減った
・パーツに必要な部品が減った

テスラのギガファクトリーでは、パーツや部品を驚くほどに削減させています。

これまで1つの車のボディを作るのに70のパーツが必要でしたが、ギガファクトリーではなんと、2つのパーツで製造が可能になりました。また、これまで1つのパーツを作るのに70の部品が必要でしたが、ギガファクトリーに導入したギガプレスマシンを使うと、1つのパーツを作るのに1つの部品しか必要なくなりました。

ギガプレス導入による効果は、生産工程の削減だけにとどまらず、他にも以下のような効果がありました。

・製品の性能が進化した
・ボディを製造する工場のサイズが30%削減した
・製造に必要な装置が減った
・1製品あたりの製造時間を25%短縮できた
・機械の未稼働時間を10%短縮できた
・部品の協力会社に発注する必要がなくなり、サプライチェーンリスクマネジメントが大幅に減った
・部品が減ったことで輸送費が減った
・工程の削減、部品の減少によって人件費を削減できた

テスラはギガファクトリーの運用開始によって、自動車性能の向上と生産効率化を実現したということです。

これにより、テスラ社製の車の製造台数が増え、その分販売台数が増加し、利益を上げ続けています。2019年から2021年の販売台数は2.5倍に成長。営業利益率は19.3%と、業界内でもトップを独走しています。日本の最大手トヨタ自動車の営業利益が10%前後なので、テスラの凄さがお分かりいただけるのではないでしょうか。

今後も革新を続けるというテスラ社。CEOであるイーロン・マスク氏は、「今後数年、1年あたりの成長率は50%以上を確信している」と発言しています。

※参照:テスラ「インパクトレポート

2-3.既存ビジネスの常識を打ち破り新規事業で成功した事例

最後に、既存ビジネスの常識を打ち破り、新たな業態に生まれ変わった事例として、以下の2社の事例をご紹介します。

・カルチュア・コンビニエンス・クラブ
・Netflix

時代の流れとともに変化する有名企業2社の事例をみていきましょう。

2-3-1.カルチュア・コンビニエンス・クラブ

近年ニーズが大きく変化したDVDやCDなどのレンタル業界。業界大手のTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブは、2023年、大きな決断をしました。

2023年10月から予定している渋谷TSUTAYAの全面改装に伴い、DVDやCDなどのソフトコンテンツのレンタルを終了します。近年、動画や音楽は配信サービスが主流になりつつあり、その影響を受け集客に翳りが見えていたことが原因の1つということです。

渋谷TSUTAYAは、3階から5階まで3フロアと、多くのスペースをレンタルに割いてきました。2024年春にリニューアルオープンする渋谷TSUTAYAでは、スペースの新たな活用方法を検討していて、プレスリリースでは以下のように発表されています。

「国内のみならず海外から多くの観光客が訪れる世界的観光地・渋谷の一等地に、世界中のIPによって、365日、全ての人が夢中になれるコンテンツやイベントをご用意いたします。」

「500席を有するインスパイアされるカフェ&ラウンジの空間を提供いたします。」

参照:PRTIMESプレスリリース

カルチュア・コンビニエンス・クラブは、コワーキングスペースやシェアカフェラウンジを全国展開しており、渋谷TSUTAYAにもオープンする可能性があると言われていますが、詳細はまだ明かされていません。

2-3-2.Netflix

渋谷TSUTAYAはレンタル業務を終了し、全く別のものに生まれ変わろうとしていますが、レンタル事業から配信事業へと移行して成功を収めた企業もあります。その企業とは、Netflixです。

Netflixは1997年にレンタルビデオ店として創業し、今日に至るまで幾度となく業界の常識を覆してきました。

1998年には、レンタルビデオの常識であった「店舗に借りたり返しに行く」「レジに並ぶ」というユーザーの手間を省くために、世界で初めてウェブサイトによるレンタル受付を開始。さらにサブスプリクションを導入することで、延滞金が発生する不便さを解消しました。

ユーザーにとっての不便さや不満を解消した結果、ユーザー満足度と継続度の向上を実現し、これらの成功をもとにインターネットでの動画配信への投資を実施することになったNetflixは、2007年、自社のコアビジネスをストリーミング配信に移行。成功を納め、さらにオリジナル作品の製作も開始し、アカデミー賞をはじめとする、世界的な賞を多数の作品で受賞するほどの成功を納めています。

2023年3月現在、Netflixの加入者数は2億3250万人を記録。時代を捉えたビジネスは大成功を収め、Netflixは時価総額2000億円を超える世界的なコンテンツ配信企業となりました。
参考
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230419-OYT1T50074/
https://finance.yahoo.co.jp/quote/NFLX

 

3.DXに効果がないと感じるのは目指すべき山とやり方が間違っているから

前章でお伝えしたDXの成功事例を読んで、DXの効果についてイメージができてきたと思いますが、Google検索では、「DX 効果なし」「DX 意味ない」といった検索キーワードを目にすることがあります。

しかし、正しく推進すれば、そんなことはありません。もし、効果がないと感じる企業があるとすれば、以下の2つのことが間違っていると考えられます。

・目指すべき山が間違っている
・やり方が間違っている

DXを推進した時に、あなたの企業が「効果がない」と感じないために、効果がないと感じる企業の間違いを把握していきましょう。

3-1.DXに効果がないと感じるのは目指すべき山が間違っているから

DXに効果がないと感じている企業は、目指すべきものが間違っている可能性があります。

具体的にいうと、DX=業務改革、業務効率化だと勘違いしているのではないでしょうか。

DXは業務改革ではありません。しかし、DXは業務改革であり、業務効率化のためのシステムを導入することだと勘違いしている企業が数多くあるのが現状です。

この勘違いについては、経済産業省もはっきりと指摘していますので、資料を見ていきましょう。

こちらは経済産業省が令和4年7月に発表したものです。

参照:経済産業省「DXレポート2.2

このレポートは、既存事業の維持・運営のためにデジタル投資をしている企業が8割を占めていて、DX推進のために正しくデジタル投資をしている企業がほどんどないと指摘しています。

「業務効率化をしても意味がないのに、ほとんどの企業がそれに気づかず間違ったデジタル投資をしている」ということを経済産業省が痛烈に指摘しているのです。

では、どうすることが正しいのか?これについても経済産業省は明言しているので、見ていきましょう。

参照:経済産業省「DXレポート2.2

このレポートでは、DX推進で目指すべき姿は、既存ビジネスを省力化・効率化ではなく、新規デジタルビジネスの創出や、収益に直結する既存ビジネスの付加価値向上が目指すべき方向性ですよと伝えています。

既存ビジネスの効率化のためにデジタル化するのではなく、新たなビジネスにデジタル技術を活用することが正しい方向性です。

ですから、IT屋さんが「このシステムいいですよ」「業務を効率化できますよ」と言っているものを、補助金を使って買えば終わりという発想は大きな間違いなので、絶対にしないでください。

システム導入について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

3-2.DXに効果がないと感じるのはやり方が間違っているから

DXに効果を感じない企業は、やり方が間違っている可能性があります。

DXは、正しい知識や正しいやり方を学んだ上でしか成功しないからです。DXは、知識がない人が闇雲に始めても絶対に成功しないと言い切れるほど、難しいものです。

例えば、DXでは、「目的を決めてそれを達成するための手段を選ぶ」これが鉄則ですが、これすらできていない企業が見受けられます。ベンダーに言われるがままにシステム導入している企業も、同様です。自社で目的を決めてから、それを達成するために必要な手段を選ぶのであって、補助金が使えるからとか、ベンダーがおすすめするからといった理由でシステム導入するのであれば、それはDXとは言えません。

また、「コンサルティング会社に依頼しているから大丈夫」と安心している企業がありますが、基本的な知識もなく、やり方もわからないままにコンサルティング会社に丸投げして成功するようなものではありません。何の目的意識もなく、従来のコンサルティング会社に言われるがままに進めるくらいなら、DXをやらない方がいい場合もあります。

※コンサルティング会社について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

DXの正しい進め方をはじめ、DXの基礎知識についてはDXの教科書.comで学べるので、ぜひ参考にしてください。

4.DXの費用対効果は合っているのか

経営者やDX推進担当者にとって気になるのが、DXの費用対効果についてではないでしょうか?

結論から申し上げると、現金だけを見た場合、DXの費用対効果を計ることができますが、それは各企業のリターンとコスト、それに対する考え方によって異なります。

また、感情などを含めて総合的に費用対効果を見た場合は、一概に計ることは難しいと言えるでしょう。

ここでは、現金だけを見た場合について、具体的な数字を出して費用対効果を考えてみましょう。

毎年2千億円の利益を産む会社があったとして、1兆円かけてDXするとします。(会社の規模にもよりますが、DXでは1兆円くらい簡単にかかってします。社内のシステムの入れ替えや、そのシステムの入れ替えに伴い不動産を借りると、1兆円くらいです。みずほ銀行のシステム改修は見積もりで3兆円でした。)1兆円かかっても、この先毎年2千億円の利益を5年間生み出せるなら、トントンです。6年目以降、プラスになっていきます。

このように、費用対効果を考える場合のリターンは以下のように考えられます。

・その会社が毎年どのくらいの利益を平均的に生み出しているのか・後何年その利益を生み出し続けられるか

これを合わせて考えるのがリターンです。

ではコストは何がかかるかというと、以下のようなものがあります。

・外部に発注する費用
・外部から何か買ったり借りたりする費用
・社員が手を止めることで下がる売上

特に問題となるのが、社員の手を止めることで売り上げが一時的に下がることです。DXを推進する際は、時間がないから社員の手を止めないと改革なんてできません。つまり、通常業務の手を止めることになるので、当然売上が下がりますが、これを甘受する必要があります。

DXは、正しいコストをかけないと効果は絶対に出ません。

社員の時間を、売上を作ることではなくて、会社を変えることに使う。

これをちゃんとやらないと、変わらないどころか変に火傷して終わるだけなので、DXはやめたほうがいいです。DXを推進する時は、変革のために社員の時間を作る、これが条件です。

以上のように費用対効果を現金だけで見ると、毎年いくら生み出す会社を何年延命させられるか、これがすごく大事になります。また、それに対する評価は、企業の考え方次第です。先ほどの具体例でいくと、年2千億円の利益でDXに1兆円かけることをどう判断するのか。これはそれぞれの会社の考え方次第だと言えるでしょう。

ここまでは、現金として計算できる場合についてお話ししましたが、先ほどもお伝えしたとおり、感情などを含めた場合は、費用対効果を一概に算出することはできません。

法人格というものに、お金を生む以外のことを思ってしまっている人は数多くいます。それは、「親父から引き継いだ」とか、「伝統が」とか、「お世話になっているから」といった感情からくるものです。会社への思い入れや残したいという気持ちなどが入ってくると、現金計算できないので、費用対効果は計算しにくくなります。

しかし、本来、法人格というのは、お金を生むためだけのものです。費用対効果について知りたい場合は、一旦感情は抜きとして、現金のみを計算するといいでしょう。

5.DXを推進するべきか経営判断するための2つのチェックポイント

ここまでDXの効果について実例を交えてお伝えしてきましたが、自社でDXを推進するべきか、まだ判断できない人もいることでしょう。そこでここでは、DXを推進するべきか考えるためのポイントを押さえておきましょう。チェックポイントは、以下の2つです。

・経営者が会社を本気で残したいと思っているか
・事業環境の変化についていけているか

5-1.経営者が会社を本気で残したいと思っているか

「本気で会社を残したい」

経営者にこの気持ちがある場合は、DXを本気で推進するべきです。

すでにお伝えしている通り、DXには倒産の可能性を下げる効果があります。

本気でDXを推進すれば、基本的にうまくいきます。

「本気で取り組む」

これがうまくいくための絶対条件です。生半可な気落ちでやるくらいなら失敗するのでやらない方がいいでしょう。

ただし、推進しないと決めることもまた、簡単なことではありません。DXを推進しないと決めた場合は、以下のようなことが起こる可能性が上がることを覚悟してください。

・雇用しにくくなる
・株主や銀行に相手にされなくなり、資金調達が難しくなる

少子高齢化が進む現在の世の中、そして未来では、人材の確保が課題とされていて、DXを推進せずに現状を維持すると、人材不足は今以上に深刻化するでしょう。逆に、DXを推進すると、雇用がしやすくなると言われています。DXを推進することで、同時に働き方改革も進み、働きやすい環境を提供できるようになることや、デジタル化が進み職場が魅力的になることが理由だと考えられます。

また、株主、銀行についてですが、今時DXをしないと宣言している会社の株は誰も買いません。銀行の対応も同様で、将来性について不安を抱かれ、融資を受けづらくなる、なんてことも起こるかもしれません。

もしあなたが、本気で会社を残したいと思っていて、DXを推進した方がいいと思い始めているなら、ぜひこの記事を最後まで読み進めてください。また、DXの教科書.comでDXに関する基礎知識を深めることをおすすめします。

5-2.事業環境の変化に自社がついていけているか

DXを推進するべきかどうか判断する際には、事業環境に自社がついていけているかどうかで判断するのもいいでしょう。

事業環境が変わるのに自社が変われないと、最終的に倒産に追い込まれます。

事業環境とは、ビジネスをやる環境のことです。

私たちの生活に例えると、明日の天気や気温のようなもので、私たちがいじれるものではありません。天気や気温の変化によって私たちの体が自律神経で体調管理をし、管理しきれないと体調不良になるように、ビジネスでも同じようなことが起こります。ビジネスにおいては、事業環境が変化したときに自社がその変化に対応できないと、事業環境との摩擦で苦しむことになります。苦しむとは、薄利多売がさらに薄利になる、といったことです。

つい最近も、事業環境の変化に対応できずに倒産した会社のニュースが話題になりました。

学校給食供給会社「ホーユー」の突然の供給停止と破産手続き開始のニュースです。ホーユーは、突然音信不通になり、突然倒産すると宣言し、全国の学校給食の配給を突然やめました。突然連絡が取れなくなり、周囲が知った時には破産手続きを進めている状態で、ホーユーの山浦芳樹社長は、「ソフトランディングするため、関係各位と交渉してきたが、かなわなかったので苦渋の決断をした。食材費や人件費は高騰しているが、業界は非常に安い。ビジネスモデルは崩壊している」とテレビ朝日のインタビューに答えました。

事業環境が変わると、企業はあっけなく消えます。ですから、事業環境の変化に対応していくこと自体が、生き残っていくためには必要です。事業環境が変わるのに自社が変わらないと、ただただ苦しい時期を送った挙句、最終的に倒産するということが起こります。

今、事業環境の変化を感じていて、かつ自社がそれについていけていないと感じている企業は、一度考えてみてください。このまま会社を残さなくてもいい、なくなってもいいと思うなら、DXを推進する必要はありません。もし、会社を残したいと思うなら、DXを本気で推進し、事業環境の変化に対応していくべきです。

※参考:テレ朝news「食材・人件費高騰…「給食ビジネスモデルが崩壊」突然の営業停止で”給食”ストップ

6.DXは推進するべき、ただし課題意識なく取り組むくらいならやらない方がいい

「やった方が良さそうだから、DXをやっておくか。」
「よくわからないからとりあえずコンサルにお願いしてDXを推進してもらおう。」

この程度の考えでDXを推進しても成功しないので、そもそもやらない方がいいでしょう。

DXに課題意識なく取り組んでも、絶対に成功しません。明確な課題意識がない中でDXをしても、ゴールがどこかわからず、失敗か成功かの判断すらできません。

課題意識なくコンサルティング会社に依頼する場合も同様です。他人が書いたレポートに人生をかけられるのであれば、コンサルティング会社からレポートを買って従うのもありですが、そうじゃないのであれば、コンサルティング会社に丸投げして、指示された通りにやればうまくいく、なんていう安易な考えは捨ててください。

7.本気でDXを推進したいならコーチング型コンサルティングがおすすめ!DXのノウハウを学びながら伴走してもらえる

コーチング型コンサルティングをご存知ですか?

6章で「丸投げしてもだめ」とお伝えしたコンサルティング会社は、いわゆる従来のコンサルティング会社で、大手コンサルティング会社などはこれに該当しますが、コーチング型コンサルティングは、学びながら伴走してもらえる新しい形のコンサルティング会社です。

DXを本気で推進したいなら、コーチング型コンサルティングに依頼するのがおすすめです。考え方を学びながら進んでいくので、社員の能力向上も期待できるし、DXを確実に進めることができます。最終的に、コンサルティングを卒業して、自立できるようになるのもコーチング型の特徴です。

コーチング型コンサルティングのメリットをまとめました。

コーチング型コンサルティングのメリット
・家庭教師的に自分たちの能力を引き上げてもらいながら、自分たちがハンドリングできる範囲で物事を前に進めて利益を上げることができる
・経営者や社員の能力を上げることができる

また、以下のような企業におすすめです。

コーチング型コンサルティングがおすすめの企業
・自分たちの能力を引き上げて欲しいと思っている企業
・自分たちでハンドリングしたい企業
・担当者が責任を果たさず、お金を使って他社に丸投げすることを嫌う社長や役員のいる会社

コーチング型コンサルティングをはじめ、DX推進を依頼できるコンサルティング会社の種類やメリット・デメリットについて、さらに詳しく知りたい人は、こちらの記事をご覧ください。

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8.まとめ

本記事では、DXを推進することで得られる効果についてお伝えしました。

DXの最大かつ唯一の効果は、「倒産する可能性を下げることができる」でしたね。

会社を残したいと考えている人、自社を取り巻く事業環境の変化についていけず戸惑っている人は、ぜひ、DX推進について前向きに検討してください。本気で生き残りたいと思うなら、DXを推進する選択しかありません。

DXについての基礎知識は、DXの教科書.comで正しい知識を学べます。「DXは業務を効率化すること」などと、適当なことを言っている記事も多く存在しますので、ぜひ、DXの教科書.comを活用して正しい知識を身につけてください。