
労働生産性を向上させるためには、DX推進が不可欠です。なぜなら、労働生産性を向上させるための施策には、デジタル技術の導入が効果的だからです。
しかし、DXによってどのように労働生産性が向上するのかを理解していなければ、DXを推進しても労働生産性が改善しない、DXが進まないなどの問題が起こるリスクがあります。そのようなリスクを回避するためにも、どのようなポイントにデジタル技術を導入し、どのようにDXを推進すればいいのかを理解することが大切です。
本記事では、以下の内容を詳しく解説しています。
- 労働生産性の向上にDXが不可欠な理由
- DXによる労働生産性向上の効果
- DXを推進する方法
- 労働生産性向上に役立つツール・システム
- DXを推進する際の注意点
この記事を読むことで、DXで労働生産性を向上させるにはどうすればいいのかがわかります。
また、DX推進の方法についても詳しく解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
1.労働生産性の向上にはDXが不可欠な理由
労働生産性とは従業員一人当たりの成果を指します。労働の効率性を計る目安となり、労働生産性が高いほど導入された労働力が効率的に利用されている状態です。
労働生産性を向上させるためには、以下のような施策が有効です。
- 業務の効率化
- 従業員のスキルアップ
- 職場環境の改善
これら1つ1つの施策にDXが関係します。
では、労働生産性を向上させるための施策に、なぜDXが必要となるのかについて解説します。
1-1.業務の効率化にはデジタル技術の導入が効果大
労働生産性の向上にもっとも効果的なのが、業務を効率化することです。DXを推進し、デジタル技術の導入で業務を簡略化・自動化することで、少ない人員で業務を処理できるようになります。
業務をDXによって効率化できれば1人当たりの生産性が向上し、それを積み重ねることで会社全体の生産性を改善することが可能です。
デジタル技術を導入せずに業務工程を見直して不要な作業を削減する方法もありますが、それでは大きな効果を得られない可能性があるため、デジタル技術の導入は業務効率化において不可欠と言えるでしょう。
1-2.デジタルツールを利用して効果的に従業員をスキルアップできる
従業員がスキルアップすることで業務処理にかかる時間を短縮できれば、労働生産性の向上に繋がります。従業員のスキルアップにおいても、デジタル技術を活用することで効率的・効果的に従業員を育成することが可能です。
DX推進に役立つツールにタレントマネジメントシステムというものがあり、従業員のデータを元に育成計画を立案・運用できる機能があります。このようなツールを活用することで、効果的に従業員をスキルアップさせることができるでしょう。
また、最近では研修をオンラインで実施したり、映像配信サービスを活用した自己学習の導入を始める企業も増えています。
このように、従業員のスキルアップにもデジタル技術は欠かせないものとなっているです。
1-3.DXを推進して業務効率化を行い職場環境の改善に繋げる
職場環境にDXは関係ないように思えますが、実は間接的に関係してきます。
例えば、「周りが忙しくしているから有給休暇が取りにくい」といった不満を持つ従業員がいた場合は、まずデジタル技術を導入することで従業員の負担を減らすことから始めます。すると、マンパワーで乗り切っていた業務の一部を削減できるため、有給休暇を取りやすい環境づくりに役立つでしょう。また、残業が多い場合も同様に改善が可能です。
また離職率が高い場合も、前述したタレントマネジメントシステムを導入することで離職者のデータを分析して在籍者の離職予兆を把握することができるため、早い段階で離職防止の対応が可能になります。
労働生産性を向上させるためには、職場環境を改善することも大切です。職場環境が悪ければ、従業員の作業効率やモチベーションにも悪影響を及ぼす可能性があるからです。
また、職場環境が悪いまま放置すると、スキルやノウハウを持った優秀な人材が離職する原因になる可能性もあり、労働生産性を下げてしまいかねません。
職場環境を改善できるような労働環境をDXで整え、職場環境の改善に取り組みましょう。
2.DX推進による労働生産性向上の効果
DXを推進することで得られる労働生産性向上の効果は、具体的に以下のようなものがあります。
- 業務の自動化による従業員の負担軽減
- 人材データによる人材資源の最適な活用
- 業務フローの統一による作業効率の向上
- 業務の平準化による業務量の調整
それぞれの効果がどのように得られるかについて、解説していきます。
2-1.業務の簡略化・自動化による従業員の負担軽減
DXによる生産性向上の効果がもっとも得やすいのが、デジタル技術による業務の簡略化や自動化です。アナログで行っていた業務にシステムやツールを導入し、簡略化・自動化することで従業員の作業負担を減らすことができます。
特に定型業務は自動化できるものが多くあります。
例えば、以下のような業務です。
- 給与明細の作成
- 交通費計算
- 見積もりの作成
- 日報作成
このような業務が簡略化・自動化されれば、従業員の負担軽減に繋がるだけでなく、売上に関連するコア業務に集中しやすい体制作りができます。
2-2.人材データによる人材資源の最適な活用
従業員にパフォーマンスを最大限に発揮してもらうためには、人材配置が重要です。
人材データを分析してくれるツールを導入することで、従業員ごとに最適な人材配置も可能になります。
最適な人材配置を行うことで従業員のモチベーションを底上げすることができ、より生産性を高めることができるでしょう。
人材データは前述した通り、人材育成や離職防止にも活用できます。DXを推進して業務量を減らし、限られた人材を効果的に活用することで、生産性が向上するだけでなく人材不足にも備えることができるでしょう。
3-3.業務フローの統一による作業効率の向上
前述した通りDXを推進してシステムやツールを導入することで、業務の簡略化や自動化ができます。そうすることで業務を最適化することができ、工程が多く複雑でフローが属人化されていた業務も統一化することができます。
最適化された業務が統一されれば作業効率がアップし、生産性の向上にも繋がります。
3-4.業務の平準化による作業量の調整
特定の従業員に作業が集中してしまう状態は、人材を有効活用できているとは言えません。ほかの従業員が業務内容のを理解しないままの状態を放置すると、属人化が進んでしまう原因になります。
また、同じ作業をほかの従業員が行った際にミスを多発するなど、生産性を低下させてしまう原因にもなるので、業務量にばらつきが出ないように平準化する必要があります。
DXの推進によって業務フローを最適化して統一すれば、業務の平準化も同時に行うことができます。
3.労働生産性を向上させるためのDX推進7STEP
労働生産性を向上するためにDXを推進するには、いくつかの段階を踏む必要があります。
以下は、経済産業省が発表したDX推進ガイドラインです。
出典:経済産業省|デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver. 1.0
ガイドラインではDX推進のための経営のあり方などが記載されています。ガイドラインを元に、DXを推進するためのステップをまとめました。
STEP1.経営戦略・ビジョンの提示
STEP2.経営トップのコミットメント
STEP3.DX推進のための体制整備
STEP4.予算計画
STEP5.現状のチェック
STEP6.業務のデジタル化
STEP7.効果の確認・改善
これらのステップを1つずつわかりやすく解説していきます。
3-1.STEP1.経営戦略・ビジョンの提示
まず、DXを推進するための戦略を立てましょう。どのようにDXを進めていくかの指針となるため、ここを曖昧にしては失敗に繋がってしまいます。
DXを推進し、デジタル技術の活用によってどの事業分野で変革を目指すのか、そのためにはどのようなビジネスモデルの構築が必要かなど、経営ビジョンを明確にしましょう。
戦略は具体的な計画と指標を立てることで、明確なイメージを共有することができます。
3-2.STEP2.経営トップのコミットメント
DXはITに強い人材が担当者となって推進されることがよくありますが、大切なのは経営者が担当者に丸投げしないことです。従業員に担当者から業務のやり方を変えることを通知されても、各部門から抵抗を受ける可能性があるからです。
DX推進は全社が一丸となって取り組むべき課題であるため、担当者から各部門に通知するのではなく経営者から全社的な発信をしましょう。推進自体は担当者が行っても問題ありませんが、経営者自身にDX推進についてコミットメントしてもらい、課題が発生した場合には経営者が意思決定をするなど後押しを行いましょう。
3-3.STEP3.DX推進のための体制整備
DX推進を始める前に重要なのが体制整備です。体制をしっかりと整えた上でDX推進を開始しましょう。
DXを推進する体制には以下の要素が必要です。
- マインドセット
- 推進・サポート体制
- 人材
これらの要素がなぜ必要なのかについて解説します。
3-3-1.DXを推進するためのマインドセットを作り出す
DXを推進するためには、失敗を恐れて計画が進まないということがないように、経営者や担当者は新たな挑戦のためのマインドセットを作り出していくことが重要です。そのためには、まず以下のような仕組み作りをしましょう。
- 「仮設・実行・検証」の繰り返しプロセスの確立
- 「仮設・実行・検証」の繰り返しプロセスのスピーディな実行
- 繰り返しプロセスによるスパイラルアップ
この仕組みをあらかじめ作っておけば、従業員ができあがった仕組みの通りに動くだけで、自然と「仮設・実行・検証」の繰り返しを行っていく姿勢に変わります。そうすると、従業員がDXを推進する中で業務に変化が表れる手ごたえを実感できるため、マインドセットを醸成していくことができるようになるでしょう。
3-3-2.スピーディーに課題解決するための推進・サポート体制を整える
DXを推進するためのサポート体制を整えましょう。
経営戦略やビジョンの実現のために、デジタル技術を導入し実行する各事業部門に、活用の取り組みを推進・サポートするDX推進部門の設置が推奨されています。部門を設置することで、課題に対してスピーディーな解決が可能になるでしょう。
3-3-3.DX人材を確保・育成する
推進・サポート体制を整えるためには、デジタル技術の活用ができる人材の確保が必要です。社内に適任者がいない場合は外部パートナーに依頼するなど、社外との連携を摂りましょう。
DX推進の段階で適任者がいなかったとしても、DXを成功させ続けるためにDX人材を育成していくことが大切です。
STEP4.予算計画
DX推進において、コストばかりを重視するとDXが実現できない可能性があります。最大効率を実現するためには、ある程度の費用がかかることは避けられないということは理解しておきましょう。
ただし、やみくもに予算を投入するのではなく、実際に施策がどの程度自社のビジネスにプラスになるのかを充分に検討・判断した上で、投資するかどうかを決定してください。
もし予算が足りず計画が止まってしまっても、他社は着々とデジタル化を進めているため、マーケットから排除されてしまうリスクがあることを念頭に置きましょう。
未来への積極投資が重要であるため、導入すべきシステムやツールが導入できないということのないように、計画に沿った予算を確保してください。
STEP5.現状のチェック
STEP4までDX推進の準備を整えましたが、ここから実際に行動に移ります。
まず、以下の現状チェックを行いましょう。
- 老朽化したりブラックボックス化しているシステムがないか
- 現在使用しているデータは新しいシステムに移行可能か
- 属人化しているシステムやデータはないか
- 費用対効果が悪いシステムはないか
- 業務を止めても問題ないシステムはないか
問題のあるシステムやデータがある場合は、状況に合わせてシステムの構築や廃棄を行ってください。
STEP6.業務のデジタル化
DX推進でまず手をつけるのが、業務のデジタル化です。紙ベースの書類をデジタル化し、自動化できるものはシステムに任せましょう。
特に、定型業務は手順が決まっている作業であることが多く、自動化しやすい業務です。自動化することで時間短縮だけでなく、人的ミスをなくす効果も得られます。
業務をシステムに任せて自動化する場合は、他部門との連携や既存システムとの親和性を考慮することで、業務をスリム化しましょう。
STEP7.組織構造・ビジネスモデルの組み直し
業務をデジタル化して効率が上がれば、それまで10人で行っていた業務が1人で行えるようになるなど、リソースの投資配分を変更する必要があります。人材や資金をより投資効果の高い分野に多く配分するなど、調整を行ってください。
DXが順調に進めば、事業戦略や業務形態が大きく変わる可能性があります。組織全体のバランスを見直し、企業競争力を高めるためにビジネスモデルの組み直しを行いましょう。
STEP8.効果の確認・改善
導入したシステム・ツールや修正した業務フローは定期的に効果を確認し、より良くするための改善を行いましょう。業務効率を数値で確認し、課題点と評価ポイントを探しましょう。トラブルに繋がりそうなポイントがあれば、早急に改善を行ってください。
4.労働生産性を向上させるためのDX推進ツール・システムの例
DX推進のために導入されるツールやシステムにはさまざまなものがあります。
ここでは、労働生産性の向上に役立つツールやシステムについて解説します。
4-1.ワークフローシステム
稟議・契約書・各種申請などの紙で手続きを行っていた申請書や伝票を電子化し、承認や回覧ができるようにするシステムです。業務の効率化ができるだけでなく、決裁時間の短縮にも繋がります。
また、申請されたデータは簡単に検索や集計をすることができ、ペーパーレス化により管理の手間が削減できるというメリットもあります。
4-2.RPA
定型業務の自動化やシステム化に役立つのが、RPAというツールです。ソフトウェア型のロボットを活用し、定型業務を自動化できます。
生産性の低い単純な事務作業や反復作業の自動化に向いているため、以下のような業務で取り入れることが可能です。
- 見積もり・請求書の作成
- レポート作成
- システムへのデータ入力
このような作業はRPAで自動化すれば、人にしかできない業務に時間と人員を投入できるようになるでしょう。
4-3.タレントマネジメントシステム
前述した通り、従業員のモチベーションを保つことや、離職を防止することも労働生産性に関わります。人材に関するシステムを導入する場合はタレントマネジメントシステムがおすすめです。タレントマネジメントシステムは人材リソースを最大限に活用するためのシステムで、人材に関する情報を一元的に集約・管理することができます。
人材の評価・育成・活用を強化でき、離職の予兆をアラートしてくれるものもあります。
4-4.情報共有・コミュニケーションツール
情報共有が適切に行われていなければ、情報不足で余計な手間がかかったり、正確に伝わっていなかったことでトラブルに繋がったりするなどの問題が発生します。
反対に、情報共有が充分に行えていれば、伝達ミスや情報の再確認など時間の無駄をなくすことができ、時間を有効に使えることで生産性にも影響するでしょう。
情報共有には以下のようなツールがおすすめです。
グループウェア | 企業内のコミュニケーションを円滑にして業務効率を向上させるためのツール <主な機能>
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FAQツール | よくある質問とその回答を作成・蓄積して、質問を検索することでユーザーが自己解決できるようにするツール |
タスク管理ツール | プロジェクトの進行度合いを管理するツール <主な機能>
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また、最近ではリモートワークが急速に普及し、コミュニケーション機会が減少しています。
コミュニケーション不足は業務の遅延や従業員のメンタルの不調に繋がるため、コミュニケーションツールの導入も検討しましょう。
チャットタイプのコミュニケーションツールは、メールよりも気軽にコミュニケーションがとりやすくおすすめです。
5.DX推進の取り組み事例5選
日本の企業の中で、DXを推進して生産性の向上に成功した企業の事例を紹介します。
5-1.佐川急便
佐川急便では、ネットショッピングの普及により配達する荷物の数が増加したため、再配達の件数も増加したことで労働力不足が問題となっていました。
その問題を解決するために、これまで人がおこなっていた物流センター内の商品取り出し作業や梱包作業を行うロボットを導入しました。その結果、他の作業に人員を回すことができるようになり、業務効率化を実現しています。
5-2.ADインベストメント・マネジメント
ADインベストメント・マネジメントは不動産投資信託の資産運用会社です。基幹システムからデータを抽出してデータの整合性を確認する作業が複雑で、さらに作業が属人化していました。そのため、適切なタイミングでレポートを作成できず、蓄積されたデータを充分に活用できていないという問題を抱えていました。
その問題を解決するために、蓄積してきたデータを利活用できる情報体制の構築を行い、属人化していた作業時間の短縮や計数管理の効率化を実現しています。
5-3.オープンハウス
オープンハウスではビッグデータプラットフォームを導入しています。機械学習を行い作業のデジタル化を進めて、年間4万2千時間の工数削減に成功しました。さらに、広告チラシの作成を自動化し、広告審査時間も約900時間削減に成功しています。
6.労働生産性向上のためにDXを推進する際の注意点
労働生産性向上のためにDX推進を検討しているのであれば、以下の注意点を理解しておきましょう。
- 一貫性のあるシステム構築が必要
- IT人材の確保や育成は必須
- 全社で取り組む
では、これらの注意点について詳しく解説していきます。
6-1.一貫性のあるシステム構築が必要
導入時から長い年月が経過し、最新技術を適用しにくい老朽化したシステムをレガシーシステムといいます。レガシーシステムがあると、DX推進が遅れる原因になります。
DXを推進するのであればレガシーシステムを一掃し、一貫性のあるシステム構築を行いましょう。
システム構築には人材だけでなく、時間もコストもかかります。自社でどこまでできるのか、何を外部に発注する必要があるのかを事前に算出しましょう。
6-2.IT人材の確保や育成は必須
前述した通り、DXを推進するためにはIT人材の確保や育成が重要です。しかし、自社にIT人材がいないという企業も多いでしょう。そのような場合は採用か従業員の育成を行ってください。
自社でIT人材を確保するのが難しい場合は、外部パートナーに依頼するという方法もあります。外部パートナーに依頼するのであれば、DXに精通している企業かどうかを確認し、コストや納期などを考慮して判断しましょう。
6-3.全社で取り組む
DXの推進は全社で取り組むようにしてください。部門や現場だけでDXを進めても、企業全体の生産性向上はできません。
全社員が同じ意識を持って取り組むためには、経営者が主導となりDXを推進することが大切です。
まとめ
労働生産性を向上させるには、以下のような施策が有効です。
- 業務の効率化
- 従業員のスキルアップ
- 職場環境の改善
これらの施策は、DXを推進してデジタル技術を活用することが効果的です。
DXによる労働生産性向上の効果には以下のようなものがあります。
- 業務の自動化による従業員の負担軽減
- 人材データによる人材資源の最適な活用
- 業務フローの統一による作業効率の向上
- 業務の平準化による業務量の調整
作業負担を軽減し、コア業務に集中できる環境作りを行いましょう。
DXを推進する場合、次のような手順で準備や実行をしてください。
STEP1.経営戦略・ビジョンの提示
STEP2.経営トップのコミットメント
STEP3.DX推進のための体制整備
STEP4.予算計画
STEP5.現状のチェック
STEP6.業務のデジタル化
STEP7.効果の確認・改善
準備が不十分だとDXが進まない原因になりますので、経営者自らコミットメントしながら推進していきましょう。
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